新型コロナウイルス/「廃業検討の可能性」16%に 商議所会員アンケート調査

 大船渡市と大船渡商工会議所は、同商議所会員事業所に実施した新型コロナウイルスの影響に関するアンケート調査をまとめた。先月6~19日に約660事業所から回答が寄せられ、「影響が継続している」と答えたのは56・1%。具体的な影響では、売り上げや来店者の減少を挙げる回答が目立った。「廃業を検討する可能性がある」も16%に達したほか、情報提供の充実を求める声も多く、きめ細かい下支えを継続していく必要性が浮かび上がった。

 

支援策周知も課題
影響継続の事業所は半数超

 

 同市内では3月以降、都道府県をまたいだ移動制限や外出自粛の要請などにより、業種・業態を問わず企業活動全般に新型ウイルスの影響が及んだ。同会議所などでは地域経済や中小企業の状況を把握しながら適切な支援に取り組むとともに、国や県に必要な要望を行うため、5月以来2度目のアンケート調査を行った。
 調査対象は、会議所会員となっている1590事業所で、経済センサスにおける市内全事業所の64・3%にあたる。回答数は658事業所で、回収率は41・4%だった。
 経営面で「影響が継続している」と回答したのは56・1%。「現時点では影響がないが、今後影響が出る可能性がある」は18・5%、「影響が出たが、すでに収束した」9・3%と続き、「特に影響はない」は8・8%だった。
 主要業種別で最も割合が高かったのは飲食で94・9%。宿泊業も80%に達し、卸売業や小売業、サービス業も6割を超えた。4月に出された緊急事態宣言に伴う外出自粛や移動制限解除後も影響が続いているとみられる。
 影響が出ている事業所に前年同月との売り上げの比較を聞いたところ、「50%以上減」が28・7%。「30%以上減」は23・3%で、「20%以上減」は16・5%だった。
 5月の調査時には「50%以上減」は43%で、全体としては減少幅は縮小。しかし、直接的な打撃を受けている宿泊業だけをみると58・3%で、飲食業も45・9%と高かった。
 廃業を検討する可能性について聞いたところ、「ある」と答えたのは16・3%。「ない」は39・3%、「わからない」は42・3%だった。県内の同様の調査に比べても「ある」の割合は高く出たといい、関係者は危機感を募らせる。
 同商議所の米谷春夫会頭は「予想以上に多く、全国的な調査の平均(10%程度)よりも高い。高齢の小規模事業者で、後継者がいないなど、いろいろな理由があると思う。何とか廃業を少なくしていきたい」と語る。
 今後必要な支援策(複数回答可)で最も多かったのは、「売上減少事業者への再度の補助金」で50・0%。以下、「支援策に関する情報提供」が47・3%、「マスクや消毒液など衛生用品の供給」は26・6%、「融資など資金繰りの支援」24・8%などが続いた。
 依然として情報提供を求める声が多く、さまざまな支援策が講じられている中で、浸透できていない実態も浮き彫りに。申請・利用期限が迫っている支援事業も多い。
 このうち、感染防止に取り組む飲食店や業態転換の経費支援策として、県は1店舗当たり10万円を上限に補助対象経費の実費分を補助。同商議所が受付窓口となっているが、まだ申請していない事業所も一定数あるとみている。
 市内全世帯には9月下旬から10月にかけ、1万円分を利用できる「ふるさと振興券」を配布。利用期限は12月末までだが、今月15日時点での換金率は50%に達していない。
 現在、同商議所では、地元事業者の特産品を送料無料で発送できる「ふるさと応援便」も展開。市は、事業収入が減少した中小事業者を対象に、令和3年度課税分に限り固定資産税を軽減する措置を行う。
 市や同商議所ではこうした支援策利用を促すほか、今回の調査の分析をさらに進め、きめ細かい対応につなげることにしている。
 業種別の影響、廃業検討に関する回答は別掲。