村上真さん(大船渡市)撮影の「復興の標」が大臣賞、震災10年フォトコンテスト、陸前高田の歩み 幾重にも

▲ 復興大臣賞を受賞した村上さんの写真「復興の標(しるべ)」

村上 真さん

 復興庁が主催する「東日本大震災10年 フォトコンテスト」で、陸前高田市の㈱長谷川建設に勤める村上真さん(28)=大船渡市盛町=の写真「復興の標(しるべ)」が最優秀賞である復興大臣賞に輝いた。建設中の陸前高田市役所をはじめ、災害公営住宅、高田松原運動公園など、新しい市街地の様子が幾重にも映し出された作品。村上さんは「これからも写真仲間と切磋琢磨(せっさたくま)しながら、気仙の今を発信し続けたい」と意気込む。

 

 復興庁は、発災から10年の節目となる今年、復興の軌跡をたどるとともに、岩手・宮城・福島の魅力を伝えることを狙いとして同フォトコンテストを開催。各部門賞など22作品を選出した。このうち、復興大臣賞は最優秀の1作品のみに贈られる賞で、村上さんが見事にその栄冠を手にした。
 作品は高田町の高台にある公園から、昨年12月の夕方に撮影。海上にたなびく雲が薄桃色に染まり、海が群青色に沈む時刻で、仕事帰りの車のテールランプと、災害公営住宅・下和野団地、かさ上げ地に再建された住宅にともる生活の明かりが、まちなかに戻った人々の営みを示す。
 写真の最も手前に見えるのは、建設中の新庁舎。村上さんは、「市内で最も早く完成した災害公営住宅の下和野団地と、『復興の総仕上げ』として最後に建てられた市役所。復興事業の象徴的な建物が並んだところを、一番いいタイミングで撮りたいと思っていた」と、かねての構想を実現した。
 画面ではさらに、かさ上げ部の市街地、川原川公園、シンボルロード、高田松原球場、防潮堤と、新しく生まれ変わった陸前高田の風景をとらえた。村上さんは「海と山という、〝昔から変わらないもの〟も一緒に写したかった」と撮影の狙いを語る。
 東日本大震災が発生した平成23年に大船渡高校を卒業。大学のサークルで写真を始め、27年に長谷川建設に入社した。同社エネルギー事業部に所属しながら、陸前高田市の復興の過程を間近に見てきた村上さんは、30年にはUR都市機構によるフォトコンテストで「復興の歩み賞」(職員間最多票)を、令和2年には「iiiwateフォトコンテスト」で「三陸復興部門賞」を受賞。いずれも同市で撮影した写真だった。
 「大学を出て地元へ戻ってきたのは、まだかさ上げも済んでいないころ。そこから日々、新しいものが造られていく様子に強くひかれた」と村上さん。「コロナ禍でなかなか『見に来てください』とは言いにくいが、写真を通じ、陸前高田のことを思い出してもらえれば」と語る。
 そのうえで、「〝フロム気仙〟の風景を発信していきたい。一緒に活動している仲間と技術を磨き合い、人物も撮影できるようになれれば」と今後の目標を掲げた。
 受賞作品は、復興庁のPR活動のためポスター等に活用されるほか、写真展の開催なども予定されている。