コウノトリと確認 福井県で放鳥のメス 日頃市に飛来の1羽(別写真あり)

▲ 日頃市町内に姿を現しているコウノトリ=19日午前11時57分

 【一部既報】17日に大船渡市日頃市町内で確認された国の特別天然記念物・コウノトリとみられる1羽の鳥。鳥類に詳しい陸前高田市立博物館(松坂泰盛館長)が本紙撮影の写真などを確認したところ、コウノトリであることが分かった。足輪の情報などから、平成30年9月に福井県越前市で放鳥されたメスと判明した。放鳥個体としての確認は同22年4月の陸前高田市内以来、県内2例目。19日も同町内でその姿が見られ、関係機関では「静かに見守ってほしい」と呼びかけている。

 コウノトリは、全身が白く風切部分とくちばしが黒く、足は長く赤い。肉食性で、ドジョウやフナなどの魚類、カエル、バッタなどの小動物をえさとする。
 シベリア南東部から中国東北部で繁殖し、冬季は中国南東部に渡る。日本の野生下では昭和46年に一度繁殖が途絶え、人工繁殖や放鳥が続けられている。昨年公表された環境省レッドリスト2020では「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い」とした絶滅危惧IA類に位置づけられる。
 放鳥されたとみられる個体が見つかったのは、日頃市町内の水田。体長は1㍍ほどで、左足に黒と青、右足に黄と青の足輪を付けている。足輪の情報をコウノトリの個体群管理にかかる機関・施設間の個体検索システムで調べた陸前高田市立博物館の熊谷賢主任学芸員は、「平成30年9月に福井県越前市で放鳥されたものとみられる」と分析する。
 熊谷学芸員が同県自然環境課に確認したところ、15日午前に青森県から南下して岩手県に入ったGPSデータがあるという。
 国内では兵庫県立「コウノトリの郷公園」が野生復帰事業に取り組む。さらに福井県では、同公園からつがいを借り受けたり、有精卵を譲り受けたりして平成27年から放鳥を行っている。30年9月は3羽を放鳥しており、日頃市で確認されたのはこのうちの1羽で、3歳になるメスの「こころ」と判明した。
 姿を現した田の近くに住む男性(68)は、「先週半ばに初めて見た。変わった鳥だと思い鳥に詳しい知人に聞いたら、前に大船渡に来たことがあるコウノトリではないかということで、驚いた」と話す。
 以降、毎日のように姿を現しているといい、男性は「いつもだいたい同じ時間に来る。ほかにもえさ場を見つけて回っているのでは。風切羽の黒は扇子を広げたようにきれいで、ずっと眺めていてもあきない」と、双眼鏡を手に離れた場所から見守っていた。19日は町内の別の場所でも姿を確認できた。
 県内への放鳥個体の飛来は、22年4月に陸前高田市内で初確認されており、今回で2例目。これ以前の同16年12月には、足輪のない個体が大船渡市の盛川河川敷に飛来して11日間とどまった。その希少さに加え、「幸せを運ぶ鳥」とされることから、大勢が見学に訪れ、〝コウノトリブーム〟を巻き起こした。
 全国各地で放鳥個体が確認される中、コウノトリの郷公園では観察に際して▽静かに見守る▽私有地への立ち入りなど地域に迷惑をかけない▽えさをやらない――などのマナー順守を呼びかける。熊谷主任学芸員も「そっと見守ってほしい」と話している。