栗木鉄山跡 国指定史跡へ 文化審議会が文科相に答申

▲ 国指定史跡とするよう答申された栗木鉄山跡(町提供、第一高炉跡)

地域創造学でも活用されている

 文部科学大臣の諮問機関である文化審議会(佐藤信会長)は18日、同審議会文化財分科会での審議・議決を経て、住田町世田米の「栗木鉄山跡」を国の史跡に指定するよう同大臣に答申した。今後、答申通り官報告示されて指定となる見通し。同町の史跡が国指定となるのは初めてで、関係者は、先人の営みを後生へ伝えていくとともに、地域が誇る遺跡が学習の場としてさらに活用されていくよう期待を込める。

 

 栗木鉄山は、たたら製鉄が営まれた江戸時代から蓄積されてきた技術や自然資源を生かし、明治13年~大正9年に操業された民営

の製鉄所跡。世田米の国道397号栗木トンネルの種山側に位置し、付近には大股川が流れる。

 操業中、大正2年には国内4位(民間3位)の銑鉄生産量を誇った。石垣や水路、高炉の位置などを示す遺跡が見られる。最盛期には500人超の従業員がいたとされ、郵便局、学校、職員住宅なども整備されて「製鉄村」が形成されていた。
 第一次世界大戦中の好景気で絶頂期を迎えるが、大戦終結後の急激な需要減少によって大正9年に廃業となった。
 山間の地形を生かした高炉様式は全国的に見ても珍しく、日本の近代製鉄技術史上においても非常に貴重な遺跡とされている。設備のほとんどが解体され、現在は雑木林となっている一方、これまでの残存状況調査では第一高炉跡と第二高炉跡の保存状態が良好であることが判明。昭和58年に国道397号改良工事に伴って消滅の危機にひんしたが、町が路線変更を働きかけて遺跡は保存された経緯もあり、町による遺跡の公有地化も進められ、平成9年に町史跡、11年に県史跡に指定された。
 国指定にあたっては、釜石や八幡での近代製鉄が本格化する前の遺構として重要な遺跡であるとされ、釜石田中製鉄所以外に大きな民間製鉄所がなかった時代の数少ない製鉄所の遺構として貴重なこと、製鉄所構内の遺構がよく残されていることなどが評価された。
 町内では「旧菅野家及び土蔵群」(まち家世田米駅)と旧上有住小学校校舎(民俗資料館)が国登録無形文化財、種山ヶ原が「イーハトーブの風景地」として鞍掛山(滝沢市)・七ツ森(雫石町)・狼森(同)・釜淵の滝(花巻市)・イギリス海岸(同)・花巻

市、遠野市、奥州市境の五輪峠とともに国指定名勝となっているが、栗木鉄山跡は町単独、また町内の史跡としては初の国指定となる。

 神田謙一町長は「住田町初の国指定史跡に答申されたことを大変喜ばしく思う。これまでの発掘調査や研究は、町教育委員会を主体として平成5年から7回にわたって実施し、遺構遺物が極めて良好な状態で保存されていることを確認した。これは、町の歴史文化に対する先人たちの郷土愛を証明するものであると考えている。今後は、遺跡の保全に努めるとともに、教育の一環として、直接的に歴史を感じ、学ぶことのできる場所として環境整備を図っていきたい」としている。
 栗木鉄山跡には、町内の小学校が文部科学省から研究開発学校の指定を受け、特色あふれる授業を実践している新設教科「地域創造学」の一環として見学に訪れるなど、探求学習にも活用されている。将来的には、より深く製鉄の歴史について学ぶことができる場となるよう、環境整備も行っていく。