防災・減災へ震災の教訓学ぶ場に 市が「仮設住宅体験館」運用開始 見学と宿泊可能

▲ 宿泊体験の利用を始めた「3・11仮設住宅体験館」

 陸前高田市は、東日本大震災後整備された応急仮設住宅での暮らしを見学・宿泊体験できる米崎町の「3・11仮設住宅体験館」の運用を本格的に始めた。被災者の当時の生活ぶりをリアルに再現し、暑さや寒さ、漏れやすい生活音、水回りの使い勝手など仮住まいの大変さを伝える。宿泊は、市内で防災や観光関連のプログラムに参加した人のみ有料で受け入れる。時間の経過とともに震災の記憶の風化が進む中、防災・減災について学び、教訓を伝承する施設として活用していく。

 

米崎町の8戸を存置・活用

 

見学用の展示室も用意。被災者の生活の様子を忠実に再現した

 体験館は、旧米崎中校庭に整備された神田仮設住宅団地(整備数89戸、撤去済み)の2棟8戸を活用。5月末まで存置に向けた工事を行い、完工後、宿泊できるよう手続きを進めてきた。専用サイトの公開などに合わせ、今月20日に受け入れを本格化した。
 運営業務は、市からの委託を受けて同市の一般社団法人・トナリノ(佐々木信秋代表理事)が担う。利用案内のリーフレットも作成した。
 宿泊体験できる部屋は8戸のうち、1DK2戸、2DK4戸、3DK1戸の計7戸。いずれの部屋にも寝具一式、ドライヤー、ティッシュ、ゴミ箱を置き、風呂やトイレ、台所を利用できる。
 ただし、防災・減災意識の高揚を主目的としているため、宿泊施設としての機能を最低限に抑え、利用対象は震災遺構などを巡る防災プログラムやガイドツアーに参加した人に限定する。宿泊料はプログラム、ツアーによって異なり、同館ウェブサイトで連携する市内事業者のガイドツアーを紹介している。
 残る3DK1戸は「展示室」として活用し、無料で見学できる(要予約)。トナリノが被災者にヒアリングしたうえ、入居5年目の家族4人の生活の様子をイメージして家具・家電、衣類、生活雑貨などを配置している。
 今後、仮設入居者から体験談を聞けるサービスも有料で用意する計画。開館時間は4〜6月と10〜3月が午前9時〜午後5時(毎週水・木曜日は閉館)。7〜9月は毎日午前9時〜午後9時。
 同市では津波で自宅を失った被災者のため、53団地2168戸の仮設住宅が整備された。恒久住宅への転居が進み、今年3月末までにすべての被災者の仮設退去が完了した。
 市政策推進室の村上幸司室長は「被災者が生活を維持することができた仮設住宅を見て、宿泊体験してもらい、被災者の苦労と災害への備えの重要性を知ってもらいたい。体験館を活用し、防災ツーリズムの充実にもつなげていければ」と見据える。
 体験館のウェブサイトのURLは、https://311kasetsu.com。問い合わせは、体験館事務局(℡090・2114・9038、メールinfo@311kasetsu.com)へ。