台湾に届け 観光の魅力 郷土芸能などPR動画制作 コロナ禍から復活見据え

▲ 大船渡市魚市場で行われた永浜鹿踊りの撮影(5日)

 昨年3月に策定された大船渡・住田定住自立圏共生ビジョンに基づき、大船渡市と住田町の連携による台湾向けのPR動画制作が進められている。「アフターコロナ」を見据えながら郷土芸能や自然環境などの魅力を広く発信し、より多くの観光客を呼び込み、滞在時間の増加などにつなげる狙い。コロナ禍で活動機会が限られている郷土芸能団体も〝復活〟への思いを込める。

 

大船渡・住田定住自立圏の一環

 

 同市魚市場で5日早朝、赤崎町の永浜鹿踊り保存会(金野彰会長)関係者が集まり、演舞の撮影が行われた。訪日旅行者向けのウェブメディアを運営し、動画制作を受託した㈱MATCHA(マッチャ)=本社・東京都=の関係者から指示を受け、大船渡湾や朝日が上がる稜線を背に躍動感あふれる動きを披露した。
 永浜鹿踊りは、200年以上前に西磐井郡舞川(現・一関市)を中継して住田町有住より伝えられたとされる。平成23年の東日本大震災では、津波で装束および道具一式が流失したが、全国からの支援を受けて活動を再開した。
 新型コロナウイルスの影響で、今年に入っての市内での演舞披露は今回が初めて。金野会長(64)は「10年ぶりにはかまを新調し、立派になった。これから披露や交流が増えれば」と期待を込めた。
 鹿踊りの中立を務めた小松拓巳さん(40)は「海のそばで演じる機会は少なく、風の心配もあったが、やりきることができた。活動ができない時期が長くなれば、担い手確保にも影響してくる。若い世代が上達し、世代間交流が進むためにも、披露の場が増えてくれれば」と話していた。
 市内ではすでに、碁石海岸の穴通磯でも撮影を実施。住田町内では、五葉山火縄銃鉄砲隊に関する収録などが行われた。
 定住自立圏は、一定の要件を満たした市(中心市)と近隣市町村が連携、協力し、必要な生活機能等を確保することで地域定住の受け皿形成を目指す仕組み。気仙では2市1町による検討を経て、大船渡市が中心市となり、まずは住田町と進めてきた。
 一昨年10月に、両市町間で協定を締結。連携する具体的な取り組み内容など盛り込んだ同ビジョンは、昨年3月に策定した。期間は令和2〜6年度の5年間となっている。
 ビジョンでは、生活機能の強化・産業振興の一環として「広域観光の推進」を掲げる。これに基づき、県が「いわて国際戦略ビジョン」で最重点市場に掲げる台湾をはじめ、多くの外国人観光客を呼び込む事業を展開している。
 現在は、新型ウイルスの影響で海外からの観光客は下火となっているが、需要回復期を見据えて調整を進めてきた。これまで、台湾からの観光客は、花巻市のいわて花巻空港に到着し、県内各地を訪れるケースが多いが、各市町単独のPRでは長時間の滞在や宿泊に結びつきにくいといった課題があった。
 今後も外国人観光客向けの観光ルート造成や、体験メニューの充実など受け入れ体制整備も進める方針。完成した動画は、各種インターネットメディアなどを通じて広く活用する。