2022参院選岩手選挙区/与野党陣営 激しい攻防 気仙地区序盤の情勢 広瀬氏…攻勢強める、木戸口氏…懸命の守り 

▲ 与野党陣営を軸に、激しい攻防を繰り広げる参院選岩手選挙区の候補者ポスター掲示板=大船渡市

 第26回参議院議員選挙は公示から5日目を迎えた。岩手選挙区(改選数1)には届け出順に、自民党の新人・広瀬めぐみ氏(55)、政治団体「参政党」の新人・白鳥顕志氏(51)、立憲民主党の現職・木戸口英司氏(58)、NHK党の新人・松田隆嗣氏(48)、無所属の新人・大越裕子氏(58)の5人が立候補している。広瀬氏、木戸口氏の与野党候補が激しい攻防を展開。気仙では、広瀬候補陣営が鈴木俊一財務相(衆院岩手2区)の地区後援会(鎌田和昭会長)や党支部などによる組織戦を展開し、知名度向上を図って攻勢を強める。木戸口候補陣営は後援会気仙支部(林﨑幸正支部長)や連合気仙、共闘する共産党などが支援し、野党支持層を中心に懸命に守りを固める。全体の選勢の行方は有権者数の多い大票田の内陸部も鍵となり、情勢は流動的だ。そのほか3候補も独自に戦いを始めている。(清水辰彦、八重畑龍一)

 

3候補は独自の戦い


 「鈴木財務相の指導の下、公共事業予算の確保に取り組む」。広瀬候補は23日、気仙地区内の街頭演説会で鈴木氏とともに声を張り上げ、政権与党の候補として連動をアピール。3市町を細かく短時間で回り、陣営も課題に挙げる知名度向上を急ぐ。約250人が集まった場所もあり、建設業、水産業、農林業者などの支持が広がりを見せる。
 昨年11月にいち早く出馬表明し、党の県議らとともにほぼ毎日、県内各地を回って声を響かせてきた。
 弁護士として20年以上の経験を生かし、児童福祉や子育て支援拡充を軸に訴える。県内を回る中で演説には変化も見られ、第1次産業の振興、東日本大震災からの復興、少子高齢化など、沿岸、全県の課題も訴えに反映させている。
 6年前の自民候補は、木戸口氏に全県で7万票以上の大差をつけられた。気仙3市町を含め、沿岸部でも敗れたが、昨年秋の衆院選では2区の全市町村で鈴木氏が野党候補を上回り、約8万票引き離して大勝。小沢一郎氏(比例東北)の牙城だった3区も制した。
 平成4年を最後に、岩手選挙区で勝利から遠ざかっている自民県連は、その余勢を駆り、30年ぶりの議席奪還に向け、沿岸部での支持拡大に加え、内陸部でも切り崩しを図っている。
 鈴木氏の気仙地区後援会幹部は「組織を使い、県議、市町議も表立ってやっていく。票は開けてみるまで分からない」と気を吐く。
 木戸口候補も23日、大船渡、陸前高田両市に入った。「何度も何度も足を運んできた。ずっと岩手でずっと岩手を見つめ、考え、ともに歩んできた」と、全面支援を受ける達増拓也知事の政務秘書としての政治経験や実績のアピールを含め、一つの演説場所で長い時間をかけ、政策を説く。
 物価高騰対策として、積極財政への転換や、経済を下支えするため、消費税5%引き下げを主張。1次産業では不漁に苦しむ水産物のブランド化など付加価値向上に取り組み、旧民主党政権が掲げた農業者戸別所得補償を取り戻すとした。福島第一原発事故の処理水を海洋放出する政府方針には「それでは三陸の漁業は持たない」と反対する。
 全国的には「一強」といわれる巨大与党の看板がバックの相手に対抗すべく、後援会気仙支部が5月に発足した。連合岩手の推薦を受け、連合気仙が支援し、公示直前には支持企業・団体の労働組合などにあいさつ回りした。従来の野党支持層や政権批判票を固めるべく、引き締めを図る。
 木戸口候補は「厳しい選挙」と言及し、「改革の政治に期待する皆さんの思いではね返し、議席を守らせていただきたい」と支持者に一層の結束を求めた。
 気仙支部幹部は「危機感を持っているが、相手(広瀬候補)は東京に長くいた『落下傘候補』。ずっと現場に来て、声を聞き、知っている経験を武器に政策を訴える」と戦略を描く。
 白鳥候補は参政党員の支援を受けて県内を遊説する。松田候補はインターネットの動画配信を中心に活動。大越候補は主立った動きが見られない。