3年ぶり復活 まちに活気 陸前高田で伝統の二大七夕(動画、別写真あり)

▲ 中心市街地を練り歩く豪華絢爛な山車

 陸前高田市高田町の「うごく七夕」、気仙町今泉地区の「けんか七夕」は7日、3年ぶりに行われた。東日本大震災後も続けてきた伝統行事だが、昨年までの2年間は新型コロナウイルス禍の影響でそれぞれ中止を余儀なくされた。地元住民は行事の復活を喜び、まちに力強い祭りばやしを響かせた。(高橋 信、阿部仁志)

 

まちなか彩る七つの山車/高田町・うごく七夕

 

 大石、鳴石、駅前、大町、中央、川原、長砂の七つの祭組が山車を運行。昼と夜とで装いを変え、山車を引っ張る人や太鼓をたたく囃子方らが「ヨーイヨイ」と声を響かせながらまちを活気づけた。
 各祭組の山車は、拠点を出発してそれぞれのルートを回ったあと、実行委員会(横田祐佶会長)の本部が置かれた中心市街地の交流施設「ほんまるの家」周辺の通りを練り歩いた。沿道やアバッセたかたの駐車場などには多くの見物客が訪れ、色鮮やかなアザフや吹き流し、上部に飾られるハチマキ、真っ赤なナンバンなど、趣向を凝らして作られた豪華絢爛な山車を見上げた。
 午後5時以降の夜の部では、夕闇に電飾をつけた山車が浮かび上がる幻想的な光景が広がった。辺りが暗くなるほど各祭組のかけ声や囃子も一層勢いが強まり、山車を運行できなかった2年分の思いも乗せた。
 鳴石祭組の山本一瑳君(高田第一中2年)は「久しぶりに、たくさんの人たちがいる七夕ができてうれしい。太鼓もうまくたたけた」と満足そうな表情を浮かべた。
 東日本大震災後の人口減少や新型ウイルスの影響などで山車を運行できない地区の住民らが、ほかの祭組の輪に加わる姿もあった。米崎町出身の村上武志さん(42)=大船渡市大船渡町=は、〝沼田祭組〟のTシャツを着て、大町祭組の山車の運行に参加。「沼田という祭組もあったということを忘れてほしくない。形が変わっても参加し続ける」と語った。
 横田会長(79)は「山車が動く七夕はやっぱりいい。いろいろな課題はあるが、それを乗り越えてこれだけの人が動いてくれたということは、まちづくりの一つの姿だとも思う。時代に合わせて新しい形も追い求めながら、子どもたちへと伝えていきたい」と話していた。

 

山車2基の激突 豪快に/気仙町・けんか七夕

盛り上がりを見せたけんか七夕

 震災からの復興を目指す今泉地区に、待ち焦がれた夏が帰ってきた。地元有志でつくる「気仙町けんか七夕祭り保存連合会」(佐々木冨寿夫会長)は、山車と山車を激突させる「けんか」を3年ぶりに実施。山車に取り付けた長さ約15㍍の丸太「かじ棒」をぶつけ、山車の上に立つ若者たちがササをたたきつけ合う荒々しい祭りが繰り広げられ、会場は熱気に包まれた。
 当初はコロナ禍を踏まえて規模を縮小し、山車1基の運行のみにとどめる想定だったが、「けんかをやってこそ、俺たちの七夕」と方針を転換。2基制作し、けんかを実施することとした。
 7日は日中、アザフで華やかに彩られた山車を運行。住宅が再建された高台も初めて練り歩き、引き手の「ヨーイヨイ」のかけ声が響き渡った。
 今泉地区出身の佐々木政美さん(39)=広田町=は、子ども3人と一緒に山車を引いて歩いた。双子の海鯉君(4)、織海ちゃん(4)は初めて参加。佐々木さんは「子どもと一緒に山車を引っ張るのが夢だった。七夕は一年の中で一番の楽しみ。幸せな時間だった」と感激し、長女の結海ちゃん(6)は「楽しかったです」とはしゃいだ。
 震災や高齢化を背景に準備作業の人手不足が課題になる中、今年は住宅再建の進ちょくに伴い再結成された町内会がアザフの作成に協力し、連合会の若手の活躍も光った。7月からの山車の組み立て作業にほぼ毎日顔を出した地元の小野田未樹さん(24)は「3年分の魂を込めて太鼓をたたいた。地元のみんなが楽しみにしており、何物にも代えがたい行事。携わることができてうれしい」と話した。
 佐々木会長(68)は「無事に開催できてホッとしている。夜は特に盛り上がった。けんか七夕はやはりいい」と安どし、「今年は町内会の協力をいただき、七夕好きの若い連中も本当に頑張ってくれた。ただ一言、『感謝』だ」とほほ笑んだ。