ウニ、ナマコ畜養で実証試験 市が新たなプロジェクト 双六地区で成育、出荷目指す

▲ 増殖場を設けた要谷漁港(双六地区)。本年度の実証試験を経て実用化を検討する

 陸前高田市は本年度、気仙町の要谷漁港(双六地区)でウニとナマコの畜養化に向けた実証試験に取り組んでいる。「磯焼け」に伴うウニやアワビの不漁を踏まえた新たなプロジェクトで、年度内に課題を洗い出したうえ来年度以降の実用化を検討する。先月から広田湾内にある実入りの悪いやせたウニを同漁港に順次移して餌を与えており、今秋~冬に水揚げして身質が向上しているか確かめる。同時期にナマコの種苗放流に入り、増殖を試みる。(高橋 信)

 

来年度以降の実用化探る


 実証試験地は同漁港の一角で、広さは1360平方㍍。畜養エリアを仕切るフェンスを海中設置するなど増殖場を設けるための改修工事は7月に完了した。整備費は約460万円。
 市は畜養に関する業務を広田湾漁協に委託。7月から今月にかけて高田沖海岸(気仙町)で採捕した約1㌧(約1万個)を増殖場に移しており、ウニの餌となるマコンブを巻き付けたロープを設置するなど海中林の形成も進めている。
 ウニは週1回のペースで成育状況を観察する。水揚げ後、実入りが良ければ、市内随一の集客力を誇る道の駅高田松原に出荷する。
 ナマコは県栽培漁業協会から種苗1万匹程度を仕入れ、9~10月ごろに放流する。出荷サイズになるまで数年をかけて育てながら増殖するかを調査する。
 三陸沿岸で近年、問題視されている磯焼け。藻場が減少・消失した状態を指し、海藻を食べ尽くすウニの食害が原因の一つとされる。餌がなくなることでやせて市場価格が低いウニが増える一方、同じく海藻を餌とするアワビの数が減少しており、浜の大きな課題となっている。
 県のまとめによると、陸前高田市の藻場面積は東日本大震災前(平成17〜23年平均)290㌶だったのに対し、令和2年は41㌶。消失率は85・9%で、本県沿岸市町村で最大だった。広田湾漁協は同年までの2年間、資源不足のため広田、小友の2地区のアワビ漁を見合わせる事態に迫られた。
 同漁協は高田高、民間会社と連携しながら、藻場の再生を図る活動を展開している中、市は今回、増加する「やせウニ」を活用した畜養事業に乗り出した。中国では高級食材として高値で取引されるナマコも取り入れた。
 本年度の実証試験で商業化につながるか分析する。見通しが立てば将来的には増殖場の拡大を視野に入れる。
 市水産課の菅野泰浩課長は「海洋環境が変化し、新たな養殖の形態を取り入れる必要がある。実証試験はその第一段階となる。将来的な漁業経営の安定に向け、養殖種の一つにしていけるよう努める」と力を込める。