気仙は新たに445カ所 土砂災害のおそれある箇所 県が抽出内容を公表

 県は9月30日、ホームページなどで新たな「土砂災害が発生するおそれのある箇所」を公表した。今回は県内のうち、高精度な地形情報がある範囲内で危険箇所の抽出を行い、気仙では計445カ所で土砂災害が起きるおそれがあると分かった。県は今後、残りの範囲の抽出作業と、新たな危険箇所を土砂災害警戒区域等に指定するための作業を市町村とも調整しながら進めていく。(三浦佳恵)

 

 県内には、急傾斜地の崩壊や土石流などの危険性があり、土砂災害警戒区域などに指定、または今後指定を予定する箇所が1万3305カ所ある。気仙では、大船渡市921カ所、陸前高田市685カ所、住田町497カ所となっている。
 一方、全国では近年、各地で豪雨や大型台風による土砂災害が発生し、土砂災害警戒区域外が被災するケースも見られる。県内でも令和元年の東日本台風で土砂災害が起きた98カ所のうち、18カ所が土砂災害警戒区域外だった。
 こうした状況を踏まえ、国は2年に「土砂災害防止対策基本指針」を変更。この中では、「今後は高精度な地形情報を用いて、土砂災害が発生するおそれのある箇所の抽出に努めるもの」とした。
 県は国の指針を受け、さらには住民の防災意識喚起と地域全体の防災力向上につなげていくため、3年度から新たな土砂災害が発生するおそれのある箇所の抽出作業を実施。国土地理院が提供する既存の高精度な地形情報(5㍍メッシュ数値標高モデル)を用い、詳細な地盤の高さや傾きなどを把握したうえで危険箇所を抽出し、市町村にも事前確認を行って公表に至った。
 今回公表されたのは、高精度な地形情報がある県沿岸部や内陸部の一部など。気仙は、大船渡市が日頃市町の一部(上石橋や上甲子地内)を除く全域、陸前高田市は矢作町の一関市、住田町境に接する一部を除く全域、住田町は世田米の中心地域が対象となった。
 市町別に新たなおそれがある箇所をみると、大船渡市が263カ所、陸前高田市が159カ所、住田町が23カ所。このうち、急傾斜地の崩壊は、大船渡市134カ所、陸前高田市108カ所、住田町16カ所。土石流は、大船渡市129カ所、陸前高田市51カ所、住田町7カ所。
 県内全域では、急傾斜地の崩壊が4485カ所、土石流が1183カ所の計5668カ所。地形情報の関係で、軽米町と九戸村は今回の対象範囲から外れたほか、住田町のように一部地域のみでの抽出となった市町村もある。
 県は今後、残りの範囲については独自に高精度な地形情報を整備し、抽出結果を5年度に公表する予定。今回示した箇所については、国の土砂災害防止法に基づく基礎調査を行い、各市町村とも調整を図りながら新たな土砂災害警戒区域などとしての指定を進める。
 県ホームページでは、抽出・公表の概要や市町村別の位置図などを公開。また、「いわてデジタルマップ」(https://www.sonicweb-asp.jp/iwate)にも情報を追加しており、トップページから「砂防GISコンテンツ」を選ぶと、県内の土砂災害危険区域や新たな土砂災害が発生するおそれのある箇所が閲覧可能。地図を拡大し、居住地周辺などの詳細も確認できる。
 県では「いわてデジタルマップなども活用しながら、新たな土砂災害が発生するおそれのある場所を確認し、避難や地域防災などに役立ててほしい」と話している。
 気仙の抽出結果は別表。