地域振興への活動たたえ 第48回東海社会文化賞 チェーンソーアート杣遊会(住田町)に決定

▲ チェーンソーアートを通じた地域活性化に取り組む杣遊会

 福祉や文化、教育、産業などの分野で地道な活動を続けている個人、団体を顕彰する第48回東海社会文化賞(東海社会文化事業基金主催)の受賞者が決まった。今回は、チェーンソーアートを通じて林業振興や地域活性化に取り組んでいる住田町の「SUMITAチェーンソーアート杣遊会」(佐藤清司会長)に決定。受賞者数は通算72個人53団体となった。顕彰式は、2月18日(土)に大船渡市の東海新報社で開かれる。

 

「林業のまち」をPR


 杣遊会は平成22年5月、「チェーンソーアートで町を元気に」と、住田町内などの林業関係者らが中心となって旗揚げ。総面積の9割を森林が占め「森林・林業日本一のまち」を掲げる同町にあって、地域資源を活用した活性化、豊かな自然や木の素晴らしさを次代へ伝えようとの思いが基になった。
 「杣」はきこりを表す字で、町内ではかつて杣人や杣道という言葉が使われた。会の名称はこの「杣」に、仕事の合間の遊びが発祥ということと遊び心を持とうと「遊」を組み合わせている。
 チェーンソーアートは、チェーンソーを使って木や氷から彫刻作品を作り出すもの。カナダやアメリカの林業従事者が仕事の合間に森の動物たちの姿を彫ったのが始まりといわれ、日本にも多くの愛好者がいる。
 同会ではこれまで、町内でのチェーンソーアート競技大会の開催、町文化産業まつりをはじめ、気仙管内の各種イベントにおけるチェーンソーアートデモンストレーションなどを行ってきた。
 震災後は、被災した気仙地区内の保育園や小中学校、高校へと作品を寄贈してきたほか、町内に建設された応急仮設住宅3団地への入り口看板設置も担った。
 また、年の暮れには翌年のえとをモチーフにした作品を制作して管内施設へと寄贈しており、今回は「卯」にちなみ「飛躍」や「平和」を願う作品を制作し、気仙各地の施設に贈った。
 会員は年々増えており、現在は町内だけでなく県内外で合わせて20人以上となっている。イベント開催時には、賛同者たちが駆けつけて運営に協力。東日本大震災のボランティア参加者も入会するなど、チェーンソーアートを通じて輪が広がっている。今後は「彫り手」の確保も進めていくこととしており、教室や講習会のような、チェーンソーアートに触れる機会も設けていく。
 「森林・林業日本一のまちづくり」を掲げる同町のPRの一翼を担う杣遊会では、町内児童生徒の独自教科「地域創造学」にも協力するなど、学校とも連携しながら、森林環境学習にも寄与している。
 町内に恐竜の作品を設置・展示する「ジュラシックパーク構想」も思い描くほか、チェーンソーアート作品を同町のふるさと納税の返礼品として扱ってもらうことも視野に入れるなど、まちを盛り上げていくために展望を膨らませている。
 設立から13年目を迎え、佐藤会長(64)は「長く続けていきたい。チェーンソーアートに触れる機会を創出しながら彫る人も増やし、活動範囲を広げていければ」と見据える。(清水辰彦)