2023県議選大船渡・陸前高田選挙区/地域課題解決の道筋は 新区割り 重点政策も焦点

 岩手県議選(定数48)は、8月25日(金)の告示まで残り2カ月となった。区割り改正に伴い、気仙は今回から定数2の「大船渡・陸前高田選挙区」となる。現段階で現職と新人計3人が名乗りを上げ、競争選挙となる見通し。同日投開票の日程で行われる知事選との連動や、居住地以外の市町での浸透などに加え、各候補予定者が重視している政策や地域課題にも関心が高まりつつある。一方、新たな出馬への期待もまだあり、比較的静かなムードが漂う中でも、予断を許さない状況が続く。(佐藤 壮)

 

告示まで残り2カ月

 

 現職は、千葉盛氏(40)=大船渡選挙区・1期、大船渡市猪川町=と、佐々木茂光氏(65)=陸前高田選挙区・3期、陸前高田市気仙町、自民党県連公認=が出馬の構え。さらに、前陸前高田市議の新人・畠山恵美子氏(52)=同市横田町、同党県連推薦=が起意を示している。
 千葉氏は今月、後援会(鈴木敏彦会長)や支持者のネットワークを生かした市内での支持固めとともに、新たに選挙区となった陸前高田市や住田町でも支持拡大を図ってきた。「1期目は子育て施策や観光面を含めた沿岸振興、地域医療の維持・充実、省エネ施策などには意識して取り組んできた。白石峠での新トンネル整備計画を弾みとした新たな道路ネットワーク構築を含め、引き続き頑張りたい」と、再選に向けて力を込める。
 佐々木氏も、無所属での初当選時から支える後援会(岡本紘一会長)組織などのつながりをもとに、地道に掘り起こしを進めている。新たに選挙区となった大船渡市内も水産業が盛んなだけに「今、海を取り巻く状況が大変。みんなが手を組み、知恵を出さなければ。気仙で地に足を着けた産業といえば、農林水産業。何とか前向きな流れにしたい。命綱である道路整備の遅れを取り戻し、港を生かしたまちづくりも重要」と語る。
 畠山氏は、後援会(長谷川節子会長)の関係者らとともに、知名度向上や政治姿勢の浸透に向けた地域回りを重ねる。「市議の時代から地方に雇用と所得をもたらす施策を大事にしてきた。若い女性が残るような新しい産業育成に力を入れていかなければならない。一度都市部に出ても経験を生かせるような可能性や価値観をつくり、閉塞感を打破しなければ」と話し、今後も地域に出向いての対話を重視しながら、初当選を狙う。
 3市町では毎年、対県要望として、それぞれ10項目超の課題をまとめ、県に実情を訴えてきた。国際リニアコライダーの誘致実現、内陸部につながる道路整備、県立病院をはじめ地域医療の充実、主力魚種の不漁や貝毒への対策、鳥獣被害防止、県立高校の魅力づくりなど多岐にわたる。
 その多くが前年度からの継続となっており、解決への難しさと、行政や住民の県に対する根強い期待が浮かび上がる。有権者は県議に対しても、地域課題を県政に届け、施策充実につなげる役割を求める。
 これまで、大船渡選挙区は大船渡市、陸前高田選挙区は陸前高田市と住田町が対象で、いずれも1人区。今回から3市町全体が選挙区となり、活動範囲が拡大しただけに、有権者の心をつかむ苦労も垣間見える。
 各陣営からは「同じ課題でも、地域によって実情が異なる。気仙全体だけでなく、細かい視点も重要」「新型コロナウイルスの影響もまだ残っており、なかなか思うようには動けていない」「これまで支持が厚かった世代以外への浸透には、なかなか時間がかかる」といった声も聞かれる。
 こうした中、依然として、新たな候補擁立にも関心が集まる。準備期間は限られる一方、政党ごとの動きや争点、地域別の動向には流動要素が多く「7月までに整えば十分戦えるのでは」との見方もある。
 投票日は9月3日(日)で、知事選、陸前高田市議選と同じ日程となる。知事選に立候補を表明しているのは、表明順に前県議の新人・千葉絢子氏(44)=盛岡市=と、4期目の現職・達増拓也氏(59)=同=の2人。与野党対決の構図が固まりつつある中、県議選候補予定者の動向をみると、千葉盛氏は達増氏、佐々木氏と畠山氏は千葉絢氏を支持している。
 6月1日現在の有権者数は、大船渡市が2万9235人(男1万3924人、女1万5311人)、陸前高田市が1万5817人(男7631人、女8186人)、住田町が4339人(男2124人、女2215人)。全県は102万2262人(男48万9505人、女53万2757人)。写真の並びは右から表明順。