〝海の小判〟 浜に活気 アワビ漁スタート 気仙沿岸 初日は越喜来、吉浜両漁協で(別写真あり)

▲ 漁業者らの活気にあふれたアワビの選別作業=崎浜漁港

 気仙沿岸で12日、今季のアワビ漁がスタートした。同日は大船渡市三陸町の越喜来、吉浜両漁協で口開けとなり、冬を感じさせる冷え込みとなった早朝から、漁業者らが漁船で海に繰り出し、〝海の小判〟とも呼ばれるアワビを次々に漁獲した。海況変化に伴う資源不足の懸念や、東京電力福島第一原発のALPS処理水海洋放出による中国の禁輸措置で、価格低迷が続くなど、アワビを取り巻く環境は厳しさを増す中、関係者らは安定した水揚げに期待を込める。(菅野弘大)

 

 11月1日に解禁となるアワビ漁は、各漁協、地区で天候やなぎの状況などを踏まえて開口日が決められる。今年は、気仙全体では昨年に比べて3日遅い初開口となった。
 このうち、越喜来漁協(舩砥秀市組合長)は専属分での開口。漁開始の午前6時30分、オレンジ色の朝日が差し込む海上で多くの漁船が待機し、漁業者らが一斉に漁を始めた。箱めがねで海中をのぞいて長いカギさおを巧みに操り、時々ポイントも変えながらアワビを捕っていった。
 集荷場の一つである崎浜漁港では、午前9時から集荷が始まり、漁を終えた船やアワビの入ったカゴを乗せた車が続々と乗り入れ、漁協職員らが選別作業にあたった。漁業者らは漁獲したアワビを見せ合うなどして、成果や漁況を語り合い、寒さの中で活気が生まれた。「昨年よりも多く取れた」「湾内が良い」という声が聞かれた一方で、「痩せアワビも多い」と餌不足を指摘する漁業者もいた。
 この日の同漁協の収量は、1号品と2号品合わせて約1㌧と、海況が悪く水揚げが振るわなかった昨年の初日を大幅に上回った。水揚げした木下孝之さん(82)は「なぎも良く、水の透明度もまずまずだった。でも、もの(アワビ)があるとはいえない。ある程度育てる手だてが必要ではないか」と話した。吉浜漁協でも約1㌧の水揚げがあった。
 県産アワビは、多くが中国で高級食材として扱われる干鮑に加工され、香港へと輸出されるが、福島第一原発の処理水海洋放出を受け、中国政府は令和5年8月以降、日本産水産物の輸入を停止。長引く禁輸措置で荷動きがストップし、入札価格は大きく低迷している。中国政府は今年、禁輸措置を緩和したものの、その動きは鈍く、禁輸措置以前のような状況には戻っていない。
 越喜来漁協の大上豊明業務課長(52)は「海の状況も良く、全体的にも思った以上に揚がった。この調子で水揚げが続いてほしい」と期待を込めた。
 気仙では今月、綾里を除く4漁協で開口を予定。先月29日に事前入札会が行われ、水揚げ予定数量は前年同期を下回る15・2㌧、10㌔当たりの平均価格は5万7822円で、前年の5万8000円台をわずかに下回った。
 気仙における平均価格の最高値は、昨年に続き吉浜漁協(専属)の6万3800円で、昨年から1400円下落した。