2010/02/10 003



秋の日

リヤカーに 夕焼けも積み 急ぐ道 (新沼志保子) 2009年12月4日
リヤカーは珍しくなりましたが気仙では未だリヤカーを曳いている人がいるのですね。物だけでなく美しい夕焼けも積んで帰りを急ぐ、素晴らしく美しい情景ですね。便利性と効率性を求めている物質化した現代の世の中が忘れてきた大切な情緒ですね。

枯れ急ぐ 中にも咲くや 菊の花 (菅野友子) 2009年12月1日
中国の故事にも忙中閑ありという言葉があります。冬になりまわりの草花が一斉に枯れていく中で、菊の花が咲きだしているなんと美しく可愛いいのだろうという情景が伝わってきます。枯れるものがあれば、美しく咲くものもあるのですね。

鉢植の窓辺のアロエ花芽延び 畳に届く日差し温とし (橋爪里美) 2009年12月2日
冬になれば窓辺の日差しの温もりが恋しくなります。窓辺の鉢植えのアロエも日ざしを受けてのびている。
病床六尺の正岡子規も短歌で、 瓶にさす藤の花ぶさみじかければ たたみの上にとどかざりけり と寝床から瓶に生けた藤の花に自分が生きる世界を見出して詠んでおります。
あかあかと 日はつれなくも 秋の風芭蕉)、芭蕉は沈みゆく秋の夕日と風に侘びしさを詠んだが、秋の美しい夕焼けを積んで家路を急ぐ情景に詠まれているような自然と家族への思いと抒情が気仙の心の奥に流れているものと思われる。


心の灯火

逢えそうな 気がして覗く 縄のれん同好が 遠野路からも 駆けつける (新沼良子) 2009年12月4日
縄のれんは外と内の境があって無きがごとく出入り自由な飲食の店です。その人に逢えるかもしれないし逢えないかもしれないが、そっと覗いてみる。詠作者の心には温かい灯火が燃えております。
その灯火を求めて朋が山を越えて駆けつけてきます。孔子朋遠方より来たるあり亦楽しからずや の世界が浮かんできます。


乗り遅れるな

乱獲の 報い不漁に 泣く漁師
美しい 白髪を無理に 染める母
(福崎武男) 2009年12月4日
漁獲技術の発達により漁業経済は世界規模に広がり、これに乗り遅れるなとばかり魚類資源の乱獲が世界規模で進みました。このため今や世界の魚類資源の減少と漁業維持の困難が関心を呼んでおります。
女性のファッションも世界を駆け巡り、美しい黒い髪の毛を赤くそめたり、美しい白髪を染めたりしております。これも流行に乗り遅れるなとの勢いです。