2010/03/02 010



実学教育と地域大学教育

2010年2月2日の「声」の欄に『中高一貫校を考える〜住田町は町立も選択肢に〜平田栄夫』が掲載されている。
日本の長い歴史の中で育まれてきた・ものづくり・の伝統は世界に誇れるものである。日本は仏教や儒教、そしてキリスト教を受け入れてきたが、これらの背景にある文化と思想は深く根を張ってはいない。
即ち、思想を支えている論理を分解して新たな思想を創造することが苦手なのである。しかし、技術の吸収と洗練には素晴らしい力を発揮してきている。「声」の主張していることは、中高一貫校の教育の中で林業や農業などの実学教育を強化し充実することである。
旧気仙郡には農業高校、水産高校、工業高校、普通高校がある。近隣の気仙沼市を含めるとさらに多くなる。幸いなことに気仙には北里大学がある。
中高一貫の実学の強化と充実を北里大学と協力して気仙大学・大学院コースとして大学や大学院での教育にまで結び付ける可能性も視野に入って来る。
「声」には過疎化という深刻な状況を踏まえ「今、中山間地地域で人間が生き残り、集落を保つためには、どんな人間が必要とされるのかを追求することで、自ずから結論が導き出されるのではないか。よって、既成の概念に縛られず、新しい発想の中高一貫校が生み出されることを期待している」と述べられている。
まさに気仙はこれに挑戦すべき時期に遭遇していると思う。農業、工業、水産業、商業、普通教育を視野に入れた中高一貫教育と大学教育との連携により実学の振興を目指した教育を立ち上げる、この夢の実現は気仙地域蘇生のために急務であると思う。


流行と不易

ひとつのものに狂えば、いつか必ず答えに巡り合う木村秋則
この言葉は大船渡市読書感想文コンクール・中学校の部最優秀賞を受賞した大船渡中学校2年の岡花奈美さんの『私の舟に乗りなさい』に述べられている(2010年2月6日)。
青森県弘前市のリンゴ農家木村秋則さんは、農薬を使わずにリンゴを育てるという大きな困難に挑戦して30年をかけて、ついに台風にも負けないリンゴの栽培を成し遂げた。これを著述した本の題名が『私の舟に乗りなさい』なのである。
生きるために不可欠な食、それを支える農、この恵みを生みだす自然、これを受け入れる社会、岡さんの読書感想文には自然への感謝と関心を失いかけている現代社会への批判も込めて述べられており、心を打たれるものがある。
この感想文を読んで、愛媛県の伊予で農薬を使わずに稲作農業を開拓した福岡正信翁の著述した自然農法(1983年)を思い浮かべた。科学技術による食料増産、人知を超えた自然の奥深いエネルギーサイクル、科学農法と自然農法、ここにも流行と不易の姿が現れてくる。