雑食の薦め
適当なネタでも美味しい母の鮨 （武田みつ） 2010年2月19日、高田一柳会
母の味その適当が難しい （千葉誠子） 2010年2月19日、高田一柳会
秤より勝る味する母の勘 （千葉暘子） 2010年2月19日、高田一柳会
2月19日の東海新報「アピール」に “まぐろ危機と魚食の改革〜ＮＨＫ「視点論点」での主張〜
政策大学院大学教授・
小松正之氏” の記事が掲載されている。
「大西洋と地中海の
クロマグロの漁獲枠の削減が昨年末に大きく報じられた。このマグロをめぐっては、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引に関する条約（いわゆる
ワシントン条約）に基づき、絶滅のおそれのある種として付属書�気坊悩椶気譟∨念廚�禁止されるかどうかが、世界的に注目を集めている。この条約の第15回締約国会合は3月にカタールのドーハで開催される」
日本人は
縄文時代からマグロを食べていたが、欧米も1970年代から急激にマグロの漁獲量を拡大させている。マグロには大きく、くろまぐろ、みなみまぐろ、きわだまぐろ、めばちまぐろなどがあるが、高緯度海域に回遊し、脂がのり高級なくろまぐろの資源の枯渇は著しい。
咋年11月にブラジルで総会を開いた大西洋まぐろ類保存国際委員会（ＩＣＣＡＴ）は2010年の総漁獲量を前年比の約40％減の13,500�鼎忘鏝困垢訌蔀屬魴萃蠅靴拭�
このような状況はまぐろ食文化が世界に広まり、漁獲技術の発達とマーケットの拡大で高級魚の乱獲を呼んだものと考えられる。この結果は高級クロマグロの枯渇のみならず他のまぐろや魚類の生態系にも大きな影響を及ぼしているものと過去の経験から考えなければならない。
高級魚一種類だけの漁ではなく、ほかの魚類の漁も行い、海の生態系の維持を考慮に入れたバランスのとれた魚業を追求する必要がある。当然、魚を食する文化もこれに対応するような多彩な食文化を創出しなければならない。いわゆる豊かな雑食文化である。
「適当なネタでも美味しい母の鮨」「母の味その適当が難しい」「秤より勝る味する母の勘」、これら川柳は高級魚ではなく近くの魚屋さんやお店で買ってきたもので、母が長年蓄えた経験と腕前で力まずに作った鮨や料理の美味いことを詠んでおります。
手近にあるものを用い、それを生かして美味しい料理を作る、これが栄養的にも、経済的にも、環境的にも、望ましい雑食文化であると思います。
2月20日の東海新報には “
ナイスグルメ賞に輝く地域の魅力アイデアコン高田高が２年連続で” が掲載されている。サバあだまっこ入り「サンマつみれ汁」を開発しての受賞である。これも雑食文化とつながる活動である。
2月19日の「ふるさと写真館」には昭和36年ころの “
天秤棒で肥やし運び” の記事が掲載されている。昭和35年の
チリ津波で大被害を被った一年後の写真である。
当時は野菜や果物は地元で作ったものを食べるのが普通であった。魚、野菜、肉、果物、と雑食文化のたくましい力のあった時代であったと思われる。「秤より勝る味する母の勘」、自分の手で家事、育児、農業と家族を支え働いてきた母の勘こそ雑食文化の力の源泉であると思われる。
一般家庭が全国レベルでマグロを食べ始めたのは戦後の高度経済成長期であると言われている。サラリーマン家庭の所得が向上し、水産物のコールドチェーンが発達してからのことである。
高級マグロ志向は経済利益追求のための一点集中主義によるものである。一点への力の集中は場合によってはそれを支える基盤構造の危険につながる。宗教や数学の世界には１の概念、ゼロの概念、多の概念がつながっているという考えがある。
標的に集中する“１”、お互いにつながっている“多”、これを支える母なる自然の“ゼロ”、雑食文化はこの循環する大きな世界から生まれてくると思う。