なんだれかんだれ

2010/03/28 ● 016

気仙の底力

年金のサイズで暮らし組み立てる（黄川田敬子）
心まで貧しくはない粗衣粗食（佐々木七草）
目に見えぬ支えで生きてきた感謝（千葉暘子）
2010年2月23日付け東海新報に掲載された川柳高田一柳会（新春句会）の題は「雑詠」である。この題目に親しみを感じるのは、梅下村塾の “なんだれかんだれ” は気仙の草の根の人々の生き方を支えている底力に触れることをねらっているので、これと関係があるのかもしれない。
この底力には「受容と創造」「豊かな多様性」「自然と地域への感謝」に通じるものが浮かびあがってくる。

【受容と創造】年金のサイズで暮らし組み立てる
古代インドでは人生を４つの時期に分け、25歳までを学生期、50歳までを家住期、75歳までを林住期、それ以後死ぬまでを遊行期と四住期に区切っている。現代の日本でも60歳で定年を迎えた人はその後は年金で生活を支えている。定年後の生活設計は積み立てた年金がどれだけあるかによって左右される。
若い時には勉学や技術の習得をして、壮年期に働いて家族を養い、定年後はボランティア活動や趣味や巡礼の旅行と古代インドと同じような暮らし方をしていることになる。人生は与えられた環境を受け入れ、その中で自分の生き方を創造していく努力を続けることである。気仙ではこのような覚悟で暮らしている多くの老人の姿を見聞きしたものだ。

【豊かな多様性】心まで貧しくはない粗衣粗食
70億人レベルへの地球規模の人口、経済とエネルギー消費の拡大、そして地球温暖化の問題が関心を呼んでいる。最近では食糧供給の限界への心配も視野に入ってきている。
日本人は欧米の人々と比べると肥満も少なく食事のカロリー消費も多くない。ある研究報告では地球上に人間が生活できる数は米国並みの食事カロリー摂取では10億人、貧しい途上国レベルでは100億人、日本のレベルで60億人くらいとされている。
日本人の食事摂取エネルギーは他の先進国と比べて多くはないが。それでも一人当たりの生活エネルギー消費の総量で見ると体重４、３㌧の象の標準エネルギー消費と同じくらいになるという。エネルギー消費でみると日本の国土に１億数千万頭の象が暮らしていることになる。
日本人は米、野菜、果物、魚、など多様な食材から肉食文化の人々と比べカロリーの低い食事文化を続けてきて、そのなかで豊かな高い文化を築いてきた。気仙にこの豊かな多様性の文化の伝統が続いていることを感じて心強い。