信頼形成思想と社会
通販のカタログめぐり外は雪 （西村千恵）
昇給も定年もない主婦の席 （清水恭子）
目に見えぬ支えで生きてきた感謝 （千葉暘子）
気持ち良く話せる友が居る至福 （熊谷榮夫）
2010年2月26日付けの東海新報より、高田一柳会（新春句会）の作品から国内外の政治経済自然環境危機に関連した視点を論じてみたい。
足を使って買い物をしないだけ通販は便利である。便利なだけに商品を買う前と買った後での商品への感想に大きなギャップが出なければ問題がないが、往々にして期待していたことと実際のものとには差が出てくるのである。
便利な
カタログ販売の前宣伝と使ってからの感想との差が大きいとカタログ販売への信頼を失う事になる。洗剤や化粧品などの宣伝と実際の品質など、カタログ販売に関係する信頼度の問題が関心を呼んでいる。
「通販のカタログめぐり外は雪」カタログを見ているうちは夢がある。しかし買ってみて期待に反すると雪に見舞われたように気持ちが冷たくなる。
ある企業傘下の職員研修に呼ばれて話をしたことがある。その企業研修は開発した製品の質と安全性、それによる信頼性を高め、顧客への説明と使用後のフォローを行うという厳しい社内規則を定めそれを実践するためのものであった。
利潤追求型ではなく、安全と効用による顧客の信頼を得るという、信頼追求型の経済活動である。
「昇格も定年もない主婦の席」この企業には主婦業を兼業している方々が多くいるが、この企業では厳しい審査をクリアーすると収入も地位も高いしっかりとした昇格が約束されている。そこには信頼形成実績が基本に据えられている。
「気持ち良く話せる友が居る至福」お互いに腹を割って心から話せる友が居ることは人生の至福であるとはよくぞ詠んだものである。
古代中国の聖人である、
孔子も “朋遠方より来るあり亦楽しからずや” と言っていた。遠く時代を超えて、友との信頼関係は大切なことは同じである。
また、同日の東海新報に
北里大学海洋生命科学部企画が寄稿した「もっと知りたい海の不思議 生きている水の不思議」が掲載されている。深海にすむ
クラゲの生態と海洋生物の世界についての報道である。
クラゲの大量発生以前の海では海の生態系というものが複雑に絡み合って一つのシステムを組んでいた。この複雑なシステムの歯車が人間の開発により、少しずつ壊され、生態系が単純化されることによってクラゲが生き残りやすい環境になってしまったと考えられる。
水深200�丹幣紊凌竺い藁笋燭�暗く、高圧の場所で、人間にとっては極限環境であるが、温度も一定した波風も立たない安定した場所である。
この深海は地球表面の７割は海で、その体積の９割以上を深海が占める。深海は地球最大の生物生息圏になっている。
「目に見えぬ支えで生きてきた感謝」まさに我々の口に入る海の恵みは、目に見えない深海の生物との関係から生まれてきたと言える。
深海にすむクラゲ類は神経を持つ動物群ではもっとも原始的な生物であるにもかかわらず、非常に高度な自己・非自己、血縁の認識機構を持っていると言われている。
人間社会もこのような厳しい認識による信頼形成を目指さねば持続できないと思う。