2010/04/13 022



地域の囲炉裏

納屋の炉を囲みて縄綯ふ農夫らの 冬の賑はひ里に今なし (新沼久仁子)
2010年3月2日、ぬはり大船渡支社歌会詠草
学校に通ふ坂道凍て付きて 下校の児らは滑りはしゃぐ (吉田徹郎)
2010年3月2日、ぬはり大船渡支社歌会詠草

少子高齢、過疎化、限界集落、人口減少の波は地方に押し寄せ、地方の生活と文化の疲弊につながってきている。
「納屋の炉を囲みて縄綯ふ農夫らの 冬の賑はひ里に今なし」50年くらい前までは冬になると農家では隣近所の人々が納屋に集まって囲炉裏を囲みながら縄仕事を一緒に賑やかに行っていたものだが、今はそれが見られなくなった。
大人が集まって仕事をしていると、子どもたちも集まって来て庭で遊んで賑やかだったが、今はそれも見られなく淋しいものだ。ただ、学校帰りの子どもたちが凍った坂道を滑って遊んでいる情景が詠まれている。
「学校に通ふ坂道凍て付きて 下校の児らは滑りはしゃぐ」この子どもたちを地域で教育してこそ、地域は元気を回復する夢が湧いてくると思われる。
東海新報2010年3月2日「声」の欄には『中高一貫校を考える〜中学卒業後の動向調査を』(大船渡市三陸町・平田栄夫氏)が掲載されており、コラム「梅下村塾」には実学教育と地域大学教育が述べられている。さらに、3月9日の同欄には「人口減少と経済」が掲載されている。
このような気仙地域の人口減少とその問題に地域文化と人材育成の面から考え、対応するための有志が集い、「梅下村塾」の寺子屋教育の準備会を3月18日に東海新報社で行った。この寺子屋教育活動が、今後の気仙地域の発展への地道で確実な一歩につながることが期待される。
3月2日の東海新報には「日本文化しっかりと 大船渡地区公民館 土曜教室の成果披露」や「慈善茶会など計画 大船渡茶道協会総会」が掲載されている。3月10日には連載「ケセン歴史考 諸々の謎に迫る」(山田原三氏)や「気仙民話を紙芝居で 中学生らが挿絵制作に励む―大船渡」が掲載されている。このような気仙地域文化活動に支えられながら、コラム「梅下村塾〜なんだれかんだれ」が生まれてきた。
「梅下村塾」は地域の人々が集まって “なんだれかんだれ” を話し合って、話の奥にある心に触れ、それを整理し地域の人々や日本の他の地域の人々、さらには世界へ発信し、お互いに考えや心を通わせることを目指している。いわば「梅下村塾」は地域の人が集まって話し合う囲炉裏である。
このように「梅下村塾」の寺子屋教育には、気仙地域文化を日本文化と広く世界の諸文化を視野に入れた視点からの地域教育と人材育成が期待されている。