なんだれかんだれ

2010/04/23 ● 025

海洋河川山岳循環文化誕生への巡礼
縄文文化からの逆照射 ②

エネルギーの循環運動は宇宙、地球、生物社会、人間社会、など森羅万象を通して行われている。この普遍的な真理と事実は当たり前すぎて慣れすぎて現代に生きている我々の心に深く響いてこなくなっている。
一方、地球温暖化、海洋資源をはじめとする食糧資源生産と供給の限界、人口増加、戦争など人類の生存を脅かす深刻な問題への関心も高まって来ている。これらの問題への関心が世界レベルで高まり、政治、経済、宗教、文化など多方面での色々な取り組みが世界のあちこちで始まっている。
複雑に絡み合う人間と自然の運動の中で、人間社会が生存できるシステムを維持し再構築し続けることが我々人類が生存を持続するために不可欠であることは言うまでもない。この一つのアプローチが「海洋河川山岳循環文化誕生への巡礼―縄文文化からの逆照射」である。
気仙地域は地質学的に４億年位前に海底から隆起した陸地であり、日本列島で基も古い地層と言われている。この気仙の地域には貝塚など縄文文化遺跡が多数残っている。気仙地域は縄文の海洋、河川、山岳文化がつながり循環していた豊かな自然の恵みを享受した特別な地域であったとも考えられる。
数千年時代が下ると黄金を生産した気仙は大和朝廷の激しい侵略を受けた。このように長い歴史を経て江戸時代には気仙の山々を越えた東北の地に安藤昌益、大正時代には宮沢賢治の世界が生まれて世界の注目を浴びてきている。宇宙への運動と海洋、河川、山岳を結ぶ運動を視野に入れた縄文文化誕生の地である気仙への巡礼は世界の巡礼者が集まって海洋、河川、山岳循環文化誕生への祈りを一緒に捧げ、心をわかちあうことにつながるものと考えている。
すなわち循環文化発祥の地からの現代文明への逆照射である。この視点から、鹿踊りや剣舞などをはじめとする郷土芸能、ダンス、演劇、音楽などの現代芸術活動も見直すことが大切であると考えている。

惜別と蘇生 ①

2010年4月1日の東海新報５面の文芸欄には随想「別れの季節に思う」（立花邦夫）、投稿「あなたの側に居てあげる」（太田敏男）、陸前高田市読書感想文コン最優秀賞「明日の意味㊤」（村上紗貴）、「大船渡短歌会新春詠草」が掲載されている。
これらの作品の奥に流れているものは “惜別と蘇生” で括ることで、響きが生まれてくる。
《煉瓦と蔵》
五つ六つ並びし煉瓦に雪帽子まるで小人のマンション風に（田中君代）
ビロードの裃纏ふ五人囃子遠野の豪商外川家の蔵に（同）
西欧風の煉瓦造りの建物と日本の蔵、生活物資や財の貯蔵だけでなく歴史の貯蔵の場でもある。ここには惜別の思いや蘇生のエネルギーが生まれてくる場所でもある。
《歴史をたどる》
先住民の文化取り入れバンクーバー華やぎ写す今オリンピア（橋爪里美）
陽春の汽車の窓べの砂鉄川しぶきて青く峡流れゆく（同）
産業革命を生んで先住民支配の上にヒューマニズム思想を生んだ西欧文化を引き継いだカナダでも、西欧の従来の生命と文化思想への反省が始まっており、今回のバンクーバーオリンピックでその思想の一端が世界に伝えられたと思う。2000年も前にアジア大陸から日本列島に伝えられた砂鉄生産技術と文化は、今は砂鉄を採った砂鉄川として山峡の川に残っている。
《小女時代への思い》
白ネギを「ひかりの棒」との例え聞く焼ネギ首に母まきくれし（田端五百子）
遠目には親子とも見ゆ土手に坐す少女と犬が凧揚げ見てゐる（同）
子どもの頃風邪をひいて母親に焼ネギを首に巻いてもらったのを思い出し、土手に犬と一緒に座って凧揚げを見ている少女に自分の少女時代を重ねて、凧の視点から自分の人生を俯瞰して充実したものにしようと思っていることが伝わってきます。