2010/05/18 029



多様性と気骨


百姓の骨農政が風化させ (木村自然児) 2010年4月13日、川柳自選句・昭和55年
無学でも母にもあった主義主張 (同)
役所にもたっぷりあった隠し金 (福崎武男) 2010年4月13日、宿題「たっぷり」川柳高田一柳会3月
たっぷりと蜜を吸い取る天下り (佐々木操) (同)

日本人の平均寿命が80歳を超えている。長生きは目出度いことであるが、少子高齢社会になって、保健医療福祉サービス供給のみならず、その財政基盤とそれを支える経済や政治の分野にも色々な問題が出てきている。
食糧自給率が30%台と低くなった日本の農政はいかにして農業従事者の自立と自律を支えるかという大きな問題を抱えている。しかし、政治家は選挙での農民票の獲得のためのバラマキ政策を続けてきており、官僚たちはこの流れに乗った自分の天下り先のことだけを考えている。
前述の3氏の川柳はこのことを詠んでいる。30年も前に木村氏は自分の母親に自立自律の気骨を見出して詠んでいる。税の再配分と社会運営、政治家も官僚も我々も気を引き締めてかからねばならない課題である。
2010年4月13日付5面の声 「障がい者雇用の促進を」 (吉田収)では、障がい者雇用がはかどっていない現状を述べている。
障がい者の雇用を考えるには地域社会に生まれ、育ち、生活していくとは何であるのかという、人間として社会としてのかかわりを根本的に考えてみる必要がある。
また8面の 「6月に手話講習会 多くの参加者を募集 陸前高田市」 の記事は、気仙地方の障がい者への取り組みの一つの表れを報じているものと思う。
障がい者に関する取り組みで世界を見渡すと、欧米社会には障がい者など社会の多様なニ―ズを考慮してこれを政策に反映させようと取り組んでいる国がある。
気仙地方はまさにこのような取り組みを組織だって始める最適の地方であると思う。長い歴史の中で気仙地方に山、海、川、平野と異なる文化の交わり合いの中で共同体を築いてきた経験と智恵がある。
この経験と知恵を絞れば気仙地方における障がい者の雇用問題をはじめとする社会の多様性を考慮に入れた地域に根差した取り組みを立ち上げることが可能である。まさに気仙地方は天下り政治官僚文化からいち早く脱却し、自立、自律を目指す時に来ていると思う。同日2面のコラム気仙坂では「須川展也氏まさかの来演」という見出しで、クラシックサクソフォン演奏の第一人者の紹介がなされている。5月15日午後時から大船渡市民文化会館リアスホールで開催されると報じられている。そして8面では「気仙の音楽界熱く 地元バンド主催イベント」が報じられている。
気仙地方の多様な文化エネルギーの表れであると思う。文化の変化と多様性の中で、しっかりと文化の根底を支える骨を育成することが気仙地方を力づけるものであると思う。


分相応と腹

情報と経済、即ち人と物と情報の流れのグローバル化はリーマンショックにみられるような世界レベルの景気低迷と信用収縮など深刻な問題を生じさせ、日本も大きな波に見舞われている。
今の世の中は一国のことが世界に、世界のことが一国へ直ちに響いてくる。このような流動する世界情勢の中で生き抜くには、儲け話に踊らされない分相応な自己抑制とそれを受け入れる覚悟、即ち腹を決めることが大切であると思う。
4月14日の東海文芸 「高田一柳会(3月)」 の作品から、これらのことが詠まれているものを拾い上げた。

ここいらが分相応と妥協する (新沼志保子)
もう少し欲しいが持てるだけにする (新沼良子)
親が気に入るのが手頃だと娶り (村上萌芽)
手頃な値ついつい要らぬ物も買い (佐藤君子)

自分を知り、世間を知って分相応に妥協するのは優しいようで難しい。
手頃な値段の物を買う時にはついつい買いすぎてしまう。常日頃からの心がけが大切であると思う。治山治水、そして水産資源管理など気仙地方の自然とのかかわりの文化を見直す時期に来ていると思う。前述の川柳には 『分相応と腹』 が響く作品が詠まれている。