2010年４月17日の東海新報７面には 「 『
大人の寺子屋』 意欲高く
日本書紀輪読で建国学ぶ 子どもたちの寺子屋から刺激 大船渡」 の記事が掲載されている。
今年は
平城遷都から1300年を迎える記念の年と絡めて、日本の建国の歴史を日本書紀の輪読を通して学ぼうということのようだ。
４月19日の産経新聞にも 「日の蔭りの中で 平城遷都1300年に思う―京都大学教授佐伯啓思」
が記載されている。
古事記や日本書紀など日本建国時代の書を学ぶことは大事なことであるが、これらの書物には
縄文時代の記述は一切ふれていない。
いわば
大和朝廷として日本国を建国した征服者側の書である。被征服者の事が全く伏せられていることに注目する必要が出てきていると思う。
それは現在の日本が
第二次世界戦争に敗北して、
東京裁判という世界史に注目されている一方的な国際裁判の結果を受け入れたことに始まる、自虐史観や、どこか腰が落ち着かないで世界の中を漂泊している政治状況に関係してくるからである。日本が世界の中で誇りを持って他の国々と付き合っていくには、弥生から始まる縄文文化の征服の歴史を被征服者の立場と征服者の立場を突き合わせて考える必要があると思う。
もちろん、このためには世界の四大文明史からひも解いて21世紀文明を視野に入れた作業が必要である。これは縄文蝦夷文化の流れを引き継いでいる気仙文化に課された使命であると思う。
くしくも、４月16日５面の声欄には 「 『外国人が珍しくない時代』 の到来」 という、岩手県国際交流会所属の熊谷良平氏の記事が掲載されており、４日17日８面には 「
宇宙の野口さんと大船渡で交信」 の記事が掲載されている。
今や気仙地方も国際交流時代と宇宙時代を迎えている。この時代認識に立てば、気仙文化の根っこへの巡礼とその再評価がいかに大切であるかがひしひしと感じられてくる。
空と海と土への祈り ��
４月29日の東海文芸 「大船渡短歌会詠草」 の中から 『空と海と土への祈り』
と題して６氏の作品を選んで奥に潜んでいる気仙文化価値意識への視点から講評する。
《空にすわれる》
海の上の巨岩に見ゆれば包む空海面のごとき夜のリアスホール （金野孝子）
雪解けに薪の割る音透りくる三月の空澄める夕暮れ （同）
真っ暗な空に巨岩のように聳え立つ市民文化会館リアスホール、暗い空の向こうには深い海が静かに横たわっている。夜の深い暗闇の奥は明日の命を育む営みがなされているのだろうと思うと、その暗闇に心が安らぐ思いが湧いてくる。
夜が明けても雪解けの北国の３月、春まだ浅い。里では色々な生活が営まれている。夕暮れになると冷たく澄んだ空にどこかで薪を割る音が響いてくる。まるで今日一日の思いが空に吸われる思いがする。
《山と海への思い》
電線を部落に引かむと月山の冷き川に祖父は死にたり （増田邦夫）
春の海玻理戸に波のゆらめきて宿直勤務も六年となる （同）
50年前には文明の利器である電気の送電がない部落があちこちにあった。月山の麓の部落に送るための送電線の取り付け工事に従事していた祖父が雪解けの川に誤って落ちて死んだことから山を思い、海辺の学校（？）での宿直勤務への思いから海を思い出して詠んでいる。
眼前に広がる海と後に迫る山々に育まれた蝦夷と気仙の風土の息遣いが伝わって来る。