空と海と土への祈り ��
《美しい花》
初市のブルーの桂華に魅せられて値段も見ずに一鉢を買ふ （村上美江）
花束を持ち膝病む伯母の来たる日は仏前の香「白桃」にせり （同）
美しい花に魅せられる、この魅せられる経験は原始生命のうごめきに通じるものであると考えられる。野山に咲く花、市で売られている花、仏前に捧げる花、花の美しさに魅せられて湧いてくる心は命の糧です。
《土を耕す》
山鳩の声をまじかに頬かぶり耕す老いの軽き鍬おと （田端五百子）
畑に履く靴丹念に洗ひをり御祖も触れたる土塊ぬくし （同）
「軽き
鍬おと」 「土塊ぬくし」 に先祖から受け継がれてきている耕す土への深い思いが込められております。この土への感謝と喜びの思いが次の世代に受け継がれる気仙の文化の育成を祈りたい。
《耐えて待つ》
春なのに何時まで続くこの寒さ暖冬とやら何処のことや （橋本淑子）
春あらしに桜も縮み花見のび何時まで寒し北国の春 （同）
現在の
気候変動は目先の変化だけではなく、億年、万年、千年、百年、十年、月、の視点から眺めないと全体像がつかめない。
万年以上も長く続いた縄文文化の流れを受け継いでいる気仙の文化の奥にはこの長い変化に耐えてものごとを見通す文化の伝統が息づいていると思われる。気仙のお袋の懐は大きく深い。
《天空へ向かう》
早咲きの八重桜見つつ通る道花よ咲けさけ天に向ひて （寺澤泰子）
先々を思ふことなかれケセラセラ祭りの踊りに精込めている （同）
長い冬を耐えると春がやって来る。天に向かって草木も動物も人の心も躍りだす。情念は一気に祭りに爆発する。気仙にはお祭りが沢山ある。
2010年4月29日付け６面には 「大漁願い北の海へ 地元船が
サケマス漁出港 赤崎町」 と題し、領海の問題を抱えるロシア海域での漁に向かう記事が、また国際地球デーに合わせた活動の 「一丸で草刈り奉仕 陸前高田で 気仙の４ＬＣ」、８面には５月２日開催予定の 「本場の
サンバ堪能して サンリアでカーニバル」、と気仙の国際政治文化とのつながりが報道されている。
個人の芸能表現としては６面に 「みすゞ演じ観客魅了 谷さんがひとり芝居 陸前高田」、８面に
「絵に込めた愛郷心 赤崎出身井上さん リアスホールで個展開幕」 が報道されている。
また、集団活動では７面 「ダンスで健康な体に 陸前高田商工会 女性部がパーティー」
「読書活動で大臣表彰 読む力の向上を評価 長部小学校が優秀実践校に 陸前高田」
が報道されている。
これらの活動を報道している東海新報の気仙文化への視点の一つとして２面の
コラム気仙坂 「心に残したい言葉」 が注目される。コラムのために取材したテープおこしをしているときに、聞き取りの時には気が付かなかったものが心に響いてくることがあり、取材する相手の方の言葉の中から相手の感動を汲み取っていくことの大切さを述べている。
これは気仙文化の言葉を介して奥に潜んでいる感動を掘り出していくことを目指している
梅下村塾とまさに呼応するものであり、今回の梅下村塾 『空と海と土への祈り』 にも述べられている。