2010/08/07 033



つなぐ

宇宙の物質も地球の生命も人間の心も見えないところでつながっております。東海新報5月20日付けに掲載されている東海文芸の詩と 川柳おおふなと(4月)の作品から 『つなぐ』 が浮かんできました。

詩 「写真」 田端五百子(あかね詩の会)

   古い布張りのアルバムを見せられた
   すっかりセピア色に変色した昭和の写真
   ぐりぐり頭の国民服を着た少年が
   直立不動の姿で映っている
   笑ってしまった
   本当にアンタなの……と
   私の知らない夫がそこにいた
   敗戦を経験して
   誰もがひもじく、貧しかったこの時代
   皆が誰もが一生懸命な昭和だったから
   強くなれたのではないか……

   疾うに遺影となってしまった夫
   寡黙だったが優しかった父と
   娘たちが懐かしがる
   ぐりぐり頭の写真を見つめながら
   飛ばしてしまった風船と一緒に
   迷子になっていた息子が
   戻ってきたような錯覚に一瞬捉えられる

            ◇

亡夫が少年時代の写真を詠んだ詩へ 『つなぐ』 返句
「小年の写真に重なる亡夫(つま)と子が

「川柳おおふなと(4月)」
雑巾が乾いたままの妻の留守 (佐々与作)
星屑の中から君を捜し当て (佐々木七草)
どの辺の星なのだろうと一周忌 (千葉暘子)
未来は見えないが思いを馳せる。未来はやがて現在になるが、心を込めないとそのまま過ぎ去っていく。人間は省みて過去と現在をつなげて現在を実感し、未来に希望を託している。
これら 『つなぐ』 の詩と川柳の作品には、亡き家族への思いや不在を実感する妻への気持ちなど、いろいろなつながりの中から湧いてくる思いが詠まれております。
同日の「ふるさと写真館」では「豊作の願いを込めて」と題し、昭和30年代の大船渡市猪川町冨岡あたりの写真が説明されております。50年以上も昔の猪川村の懐かしい風景です。写真は過去と現在をつなぎます。言葉と芸術写真は心までつなぎます。
同じく5月20日の紙面では「相原友直に学ぶもの (上) (下) 」仙台郷土研究会・名村栄治氏(一関市)の記事が掲載されている。
郷土歴史研究は郷土を歴史の流れの中で、古い昔と 『つなぐ』 ことで捉え、実感するための重要な取り組みである。歴史研究は文字に書かれて残された資料をもとに行われている。
気仙には縄文史跡が沢山発見されている。縄文文化は文字を持たなかったが、土器、土偶、貝塚など文字とは異なる作品を沢山残している。これらの作品を 『つなぐ』 ことによって縄文文化の心に触れてみたいものだと思っている。この思いは5月20日付けの同塾30も掲載されている。