2010/12/8 043



詠んで伝え継ぐ地域の文化と心、そして、まちおこし

地域文化の姿と心は地域の長い歴史の積み重ねの中から生まれて来る。地域には血縁、地縁、政治、宗教などいろいろなつながりがある。今の世の中では親子の絆が弱くなっているといわれており、テレビ、新聞、ラジオ、インターネットなどで親子、家族、地域の中で、殺人やいじめのニュースが日常茶飯事に流れている。
これは親子、血縁、地縁、政治、宗教など人間のつながりが弱くなったためといわれているが、長い歴史の経験を考え、整理すると、問題はこれらの絆の手綱さばき加減の妙と深く関係しているようだ。それは手綱を引き締め過ぎてもいけないし、緩め過ぎてもいけないことである。
手綱さばきのほどほどの加減の妙をつかむには、日常の心の鍛錬が大切である。気仙地方には少子高齢化と過疎化の波が押し寄せてきており、これによるいろいろな問題が生じており、いろいろいな取り組みが試みられている。
親子の絆を強めるための取り組みはそのひとつであり、親子共同参画のいろいろな行事が行われている。その中で注目されることは、気仙各地で行われている郷土伝統芸能の地域ぐるみの参加である。
8月15日付8面の東海新報 「剣舞の成り立ちに理解深める 日頃市」 の記事では、大船渡市日頃市町、板用地区に残る「板用肩怒剣舞」に関する勉強会が、8月12日、同地区多目的センターで開かれ、地区の小学生が集まり、普段踊っている芸能の成り立ちについて学んだと掲載されている。
「児童生徒も盆供養で門付け 綾里白浜」 の記事では、同市三陸町綾里白浜地区で8月14日、白浜剣舞保存会が地区内でお盆の門付けを行った旨を伝えている。地区の児童生徒も踊りや拍手に加わり、各戸を訪問して回った。
これまで大人だけで踊られてきたが、今年初めて小学生から高校生までの生徒も参加。男子児童と生徒は初めてとは思えないほどの勇ましい踊りで剣舞を踊り切り、家々から喝さいを浴びていたと掲載されていた。
8月18日付1面の東海新報には 「先祖の精霊を供養 各地の寺院で郷土芸能」 の記事が掲載され、月遅れお盆の14日から17日にかけ、気仙各地の寺院では先祖を供養する仏事が営まれ、厳しい残暑の中、門信徒らが手を合わせながらお坊さんのお経に耳を傾け、獅子踊や剣舞などの郷土芸能の奉納舞を観賞しながら先祖の霊を慰めた。このうち大船渡市猪川町の龍福山・長谷寺では、御施餓鬼会のあと、市の無形文化財に指定されている前田鹿踊りに小中学生も交じって踊り、これが奉納されたと報道している。
8月15日付2面のコラム 「気仙坂」 には、これら郷土芸能を日本史とのかかわりの視点から解説した記事が 「踊り継がれる鹿踊り」 と題し掲載されている。これら郷土芸能への取り組みをはじめとする活動は「まちおこし」の大きな起爆剤になる可能性を持っているが、これを実現するためには、さらに有効な方策を作り上げる必要がある。そのひとつは、郷土伝統行芸能の奥に潜んでいる昔の人々の心にふれ、その価値を地域で共有し育てることである。
さらには、これを他の地域と共有する中で、「まちおこし」のエネルギーにつながるものになると思う。既に、昨年の10月に開催された気仙応援団フォーラムで確認された気仙地域の文化価値育成と 「まちおこし」 への取り組みは東海新報の協力による三陸沿岸地域文化維新プロジェクト実行委員会の立ち上げと、その後の活動に生かされている。
そのひとつは、三陸沿岸地域文化維新プロジェクト実行委員会が、地域文化価値育成活動の一つとして行っている東海新報のコラム「梅下村塾」 による地域へのメッセージの発信、さらに、中学校、高校の文化祭における生徒との対話と俳句、川柳、短歌を詠むことによる心の交流と共有への取り組みである。
11月18日付3面梅下村塾での大船渡市立第一中学校の文化祭を詠んだ記事が掲載されており、保護者の1人が詠んだ 「学び舎の 壁や舞台のそこそこで 十五の君が輝いて在り」 は親と子の心の交流を伝えるものである。詠むことによる地域文化の心の把握と発信と感受という新しい試みは気仙地域のみならず、国内外の文化の心の交流と共有に大いに役立つものと思う。
一万年以上の昔から続いている縄文文化の心を受け継いでいる気仙地方文化の心は、数万年の歴史を持つ世界の国々の文化の心と通じ合うものを持っていると思う。