2010/10/30 大船渡市立第一中学校文化祭
「HEART〜50番目の物語〜」



2010年10月23日に大船渡市立第一中学校文化祭を参観した。私は第一中学校の前身であった盛猪川組合立盛中学校を54年前に卒業した。当時、盛中学校は桜場にあったが、立根中学校と合併して立根に大船渡市立第一中学校として統合されたことは後に聞いた。
一中祭の生徒会スローガン 「HEART〜50番目の物語〜」 は創立50周年の歴史が生んだ 「心」 で 「文化祭に取り組む心」 「学級、学年、学校の仲間を大切にする心」 「誰かを大切にする奉仕の心」 が掲げられていた。そしてこの 「心」 は世界に向けて発信することを目指して「HEART」と英語で表現されていた。


↑一中祭の生徒会スローガンをアピールしたポスター=大船渡第一中学校

校長先生のスピーチには 「過去・現在・未来をつなぐ」 という受け継がれてきた第一中学校の教育理念が述べられており、歴史や自然との対話、親子兄弟家族、友人そして地域との対話、さらには世界の人々との対話ができる教育を目指していることを述べていた。
この受け継がれてきた大船渡一中の教育伝統文化は郷土芸能 「立根・川原鎧剣舞」 や演劇 「未来へ〜50年目のキセキ〜」 に遺憾なく表現されていた。
文化祭プログラムの説明には 「川原鎧剣舞の由来は1185年壇ノ浦での源平合戦で敗れた平家一族の亡霊を、弁慶が経文を唱え続けて成仏させたものです。立根町には、約245年前から踊り継がれており、立根小学校では、昭和43年から運動会の時に踊り始めて、現在でも5、6年生が踊り継いでいます」 と述べられている。
第一中学校生たちは地元の郷土芸能保存会の先輩たちから踊りの形をしっかりと指導を受けてきて一生懸命に踊っている事が伝わってくる。
これをきっかけにして、「判官びいきと鎮魂など」 この伝統芸能に潜んでいる縄文から続く数千年の郷土の歴史の奥の魂に触れるのはこれから少しずつ学んでいかねばならないと思う。
演劇 「未来へ〜50年目のキセキ〜」 のあらすじの紹介には 「2010年4月、ある学校での始業式の日。大地震をきっかけに過去と未来からタイムスリップしてきた生徒たち。それぞれの時代を生きる生徒との偶然の出逢いの物語が描かれていく。過去から現在へ。未来から現在へ。それぞれが抱える悩みや葛藤。仲間との友情と絆、そして恋。現在の中学生に託された、過去と未来からのメッセージとは──」 と述べられている。
現代の中学生は科学技術文明の真っただ中に生まれている。第一中学校の生徒たちが、相対性理論や量子力学など最先端の現代科学の世界から引き出される四次元や多次元の時空、タイムスリップの世界を身近なものとして捉えて演劇を構成していることに感動した。
この演劇には宮沢賢治の銀河鉄道の夜や農民芸術概論綱要の世界も含まれているものと思う。そして三陸地方に大きな被害をもたらした地震や津波という自然の脅威も取りこんで演劇を構成している。
自然の恵みと脅威、愛情友情と憎悪、生と死、これらが対立し調和しているのが自然であり人間社会である。大船渡第一中学校の生徒たちは、自然と歴史と社会の関係の中にどのような対応と対話をしてどのような調和を見出すべきかを模索し努力していることに心を打たれた。校長先生のスピーチはこの伝統ある教育理念と実践を述べたものと改めて感じ入った。 (梅内 拓生)