「ありがとう」の声 港に響く、伝統の船上離任式 今年も/蛸ノ浦・赤崎両小学校(動画、別写真あり)
平成28年3月26日付 1面
東日本大震災後、一つの校舎で学ぶ大船渡市赤崎町の蛸ノ浦小学校(須藤壽弘校長、児童48人)と赤崎小学校(朝倉啓二校長、同76人)の離任式は25日、同町の蛸ノ浦漁港で行われた。退職または転任する教職員らが新任地や第二の人生に向かい〝船出〟する伝統行事で、児童や地域の人たちは船が見えなくなるまで手を振り、感謝や激励の言葉をかけた。
9人の〝船出〟見送る
船に乗っての離任式は、蛸ノ浦小で昭和20年代後半から続く伝統行事。自動車がいまほど普及していなかった当時、大船渡湾内を就航していた市農協所有の「久美愛丸」に乗り、対岸の市街地から通勤していた教職員が多かったことにちなむ。

見送りの児童一人ひとりと言葉を交わす場面も=赤崎町・蛸ノ浦漁港
東日本大震災の津波で校舎が全壊した赤崎小が同校を間借りするようになってからは、両校合同のセレモニーとして行っている。
今年の船は、娘が蛸ノ浦小に通う地元の志田剛史さん(44)が「松福丸」を出した。以前所有していた船が津波で行方がわからなくなり、おととし再建を果たしたもので、色鮮やかな大漁旗や両校の横断幕で飾られた。
蛸ノ浦小では副校長の小笠原厚子さんと教諭の平勇一さんが退職、教諭の村上千賀子さん、千葉仁博さん、講師の水野あゆこさん、事務職員の荒木美香さんが転任。赤崎小は朝倉校長、養護教諭の高橋富美子さん、講師の石川結希さんが転任する。
学校での式のあと、漁港には全校児童や教職員、保護者、地域住民ら約150人が「さようなら」「お元気で」と大きく書かれた横断幕などを持って集まり、9人は一人ひとりと握手を交わしながら乗船。
船はゆっくりと旋回しながら徐々に離れていき、見送りの人たちは、その姿が見えなくなるまで手を振りながら「さようなら」「ありがとうございました」と声をかけた。新たな人生や赴任地への船出となった教職員たちも大きく手を振り、最後に大きな汽笛が鳴らされると、双方で涙をぬぐう姿が見られた。
4月から奥州市教委で働く朝倉赤崎小校長は「二つの学校が一緒に仲良く学び、この2年間、楽しい思い出ばかりだった」と感慨深げ。赤崎小5年の小松萌衣さんと蛸ノ浦同の亘理江里奈さんは「さみしいけど、ほかの学校でも頑張ってほしい」と話していた。
市では被災した赤崎小の高台移転新築を29年1月の使用開始を目指して進めており、新校舎で両校がともに学べるよう統合を方針付けている。






