震災前に思いを寄せて おおふなぽーとできょうまで 市街地模型の展示会(別写真あり)

▲ 震災前の細浦地区、盛地区を再現した模型を展示

 陸前高田市の一般社団法人・トナリノ(佐々木信秋代表理事)による「震災前の市街地模型展示会in大船渡」は8日、大船渡市大船渡町のおおふなぽーとで始まった。東日本大震災前の街並みを再現した同市の盛地区、末崎町細浦地区の模型が展示されており、来場者らは震災前のふるさとの姿に思いを寄せた。9日まで。
 市街地模型は震災後、「『失われた街』模型復元プロジェクト」として、神戸大学大学院工学研究科の槻橋修准教授と、同大学槻橋研究室が企画・制作。制作には建築を学ぶ全国の学生が協力し、被災した気仙両市を含む沿岸市町村の街並みを500分の1の縮尺模型で復元した。
 同プロジェクトでは、被災地を再現した真っ白な模型に、地域住民から当時の話を聞きながら色をつけ、思い出や記憶が残る場所に色別の旗を立てていくワークショップを開催。こうした取り組みを通じ、街の記憶の再生を目指してきた。
 気仙での展示会は、令和元年12月以来の実施。トナリノがプロジェクトから模型を借り受けて企画しており、会場には色づけされていない盛、細浦両地区の模型が展示された。
 来場した市民らは「よく作ったなぁ」などと模型の緻密さに感心しながら、「ここは警察署」「ここには工場があった」などと震災前の思い出話に花を咲かせた。トナリノのスタッフらはこうした話を聞き取り、「思い出」「場所や人の名前」「被災後の出来事」などを示す色別の旗を立てるなどしていった。
 末崎町から訪れた後藤芳太郎さん(79)は細浦地区の模型に目を細め、「震災から10年になるから、忘れてしまっているところもあるが、『これが昔通っていた会社かな』などと思い出した。懐かしい気持ちになった」と話していた。
 展示会は、9日も午前10時~午後4時に開催。会場では、地域の思い出や記憶を語り合う「いまむかし気仙がたり会」も併催している。
 トナリノでは今後、陸前高田市や釜石市、南三陸町、気仙沼市でも展示会を開催。陸前高田市では高田町のアバッセたかたで2月11(木)、12(金)の両日、「気仙がたり会」と併せて予定している。各地で来場者らから聞き取った思い出話などは、本年度末に米崎町の陸前高田グローバルキャンパスで紹介する計画という。