亡き友の遺志継ぐ、東滝にこいのぼり掲揚/陸前高田(別写真あり)

▲ 不動明王像がまつられる東滝にこいのぼりを掲げた産土会メンバー=高田町

 陸前高田市高田町の氷上山中腹にある「東滝」で20日、旧高田中学校の昭和32年卒業生のうち、3年2組の仲間でつくる「産土(うぶすな)会」の会員らがこいのぼりを掲揚した。平成27年から同滝整備の中心的役割を担ってきた高橋國雄さんが昨年75歳で亡くなり〝支柱〟を失った同会だが、「この滝を陸前高田の自慢にしたい」という高橋さんの遺志を引き継ぎ、「これからもできる範囲で美化活動を続けたい」としている。

 

高田町の「産土会」
地道な美化活動続ける

 

 高田町字大隅の仮設住宅を過ぎ、車で5分ほど登った先に現れる東滝。古色蒼然とした幽玄の美しさから「古滝」という別名があるほか、滝つぼのそばに不動明王像がまつられていることから「不動の滝」とも呼ばれ、古くから信仰されてきた。以前は市の観光パンフレットにも掲載されていた名所の一つだった。
 ところが、平成26年に産土会で氷上山登山をした際に偶然その前を通りがかったところ、滝自体は変わらず美しかったものの、周りはうっそうとしていて薄暗く、ずっと手が入れられていないことが一目で分かるほど荒れ放題だったという。「この滝に再び〝光〟を」と願って声を上げ、仲間たちに環境美化を呼びかけたのが同会代表の高橋さんだった。
 同会は市の商工観光課、高田地区コミニュティ推進協議会、ふもとにある氷上神社の許可を取り、27年1月から自主的に整備作業を開始。数人のメンバーがほぼ毎週集まり、滝つぼに堆積していた土砂を取り除き、太陽光をさえぎっていたこずえを刈り払い、澄んだ流れと明るい木漏れ日をよみがえらせた。壊れていた不動様のほこらも直した。
 同年春から、滝を横切るようにこいのぼりを掲揚。〝こいの滝登り〟を表現したほか、ヤマメを放流したりサクラを植樹するなど、高橋さんはさまざまな美化活動を提案し、仲間を引っ張ってきた。
 しかし、昨年の5月に高橋さんが病で急逝。まもなく一周忌を迎えるこの日、高橋さんの思いを受け、同級生たちがこいのぼり設置作業にあたった。伊藤知義さん(76)は「彼がいなくなってから前ほどここへ来られなくなっているが、この作業は彼の遺志を継ぐ中でも大きなもの。これだけはなんとか続けていきたい」という。
 現在は田村孝雄さん(76)が産土会の代表を務め、かつて高橋さんが熱心に行っていたように、この日も滝つぼの堆積物を取り除く作業にあたった。かき出すための道具も高橋さんが置いていったもの。「國雄君は一生懸命だったからね」。言葉少なに田村さんは振り返る。
 整備の成果は着実に表れ、滝を訪れる人が以前より増えたと感じている田村さん。「前は本当に暗くて、それから比べたらずいぶんきれいになった。いったん手をつけたんだし、知らないふりもできないから」と笑い、「陸前高田は一本松だけじゃないというところを見せたい」と話していた高橋さんの思いを仲間たちとなぞっていくつもりだ。