再確認した「作る楽しさ」

 もう1カ月以上も前の話だが、3月初旬に大船渡市のリアスホールで開かれた「おおふなとクラフトワーク展」に足を運んだ。取材ではなく、単なる〝手芸愛好者の一人〟として。
 今回は県内外から76組が参加してそれぞれブースを設け、自慢の手作り品を展示・販売した。各ブースに並ぶ布雑貨や木工品、陶芸、織物、革小物、リメーク品といった多彩な手作り品は見ているだけでも楽しい。心の中で、「これはすてき」「どうやって作るんだろう」「作ったら楽しいんだろうなぁ」などとワクワクしてしまった。
 取材であれば、どうしても「初出店の人から話を聞こうか」「気仙の参加者からコメントを取らなきゃ」などと考えてしまう。でも、プライベートなら、気兼ねをせずに作品の作り方や材料の入手先を尋ねられる。そこから作り手の思い、制作の楽しさまでを感じ取ることができた。
 各ブースを回って、特に筆者の目を引いたのは、青森県津軽地方に伝わる伝統工芸の一つ「こぎん刺し」の作品。本来は麻布に綿の糸で刺し子を施し、幾何学模様を作り出すものだ。
 筆者は10年余り前、このこぎん刺しに魅了され、作品制作に夢中になった。メーカーから専用の布や糸を取り寄せ、がま口ポーチを何点か作ったが、忙しさにかまけているうちに手を止めたままになっていた。
 今回、同展でくるみボタンやポーチ、座布団カバーなどにこぎん刺しをあしらった作品を見て、改めて「やっぱり、こぎん刺しはいいなぁ」という気持ちがよみがえってきた。さらに、「また作りたい」という気持ちも湧いてきた。
 同展から1、2週間ほどして、久々にこぎん刺しの道具や材料を引っ張り出し、制作を始めた。図案とにらめっこしながら針を進めていく時間がなんとも言えず楽しく、面白かった。クラフトワーク展が、作る喜びを再確認させてくれたと思っている。(佳)