突然の「開発・販売終了」
令和6年9月17日付
長年お世話になってきた楽譜制作ソフト「Finale」(フィナーレ)が、先月26日に開発・販売を終了した。突然の発表で、最初に通知メールを読んだときは「何の冗談か」と詐欺を疑ったが、検索してみたら全国紙でも報道されていて、本当だった。「ブルータスお前もか」感がぬぐえない。
フィナーレとは、パソコンで楽譜を作るためのソフトウエア。販売元は海外にあり、世界中で30年余り販売されてきた。楽譜を必須とする制作現場や楽譜出版の業界では、プロアマ問わず、知らぬ者はいないソフトと言えるだろう。
音符や強弱記号などの指示通りに音を再生できるので、作曲ツールとしても使える。特に清書機能が秀逸で、ユーザーの思い描くレイアウトは、操作さえ覚えれば、ほぼできた。「日本の楽譜出版社の7、8割はフィナーレを使っている」なんて話も聞く。
そのソフトの開発終了が、突如発表された。インターネットでSNSや実況動画などを検索していると、フィナーレを使っているいないにかかわらず、音楽家らの間で衝撃と動揺が広がっているのが分かる。「(表計算ソフトの)エクセルが終わるようなものだ」とコメントしている人がいて、的を射ていると思った。
開発終了の理由はプログラム関係らしい。素人がとやかく言えることではないのでそこは仕方がないと思うのだが、「あと1年でサポートを終了するので、ほかのソフト(有料)に乗り換えて下さい」というアナウンスは、どうなのだろうか。世界最高峰をうたってきたソフトの〝終止線〟の引き方に、疑問を覚えた。
過去にも、パソコンの更新や会社買収等の関係で、使い慣れていたソフトが使えなくなりやるせない思いをしたことがあった。ユーザーに「今は味方してくれるソフトだけど、いつか裏切られる(使えなくなる)かもしれない」と不安を抱かせるようなシステムが、今後改善されていくことを切に願う。(仁)