役割果たした応急仮設

 県内で1万3984戸が整備された応急仮設住宅。先月末、陸前高田市の集約先となっていた竹駒町の滝の里団地で全世帯の退去が住み、その役割を終えた。
 今月に入って、滝の里団地を元住民が訪問すると聞き、同行させてもらった。自治会長を務めた男性と女性3人の計4人で、お年は70〜80代。いずれも震災の前は気仙町今泉に住んでいた。いまは3人が地元に戻り、1人は竹駒町で暮らしているという。
 4人は「これまでのご支援、ありがとうございました」「世界中、日本中の皆さまの愛に感謝」といったメッセージを集会所の窓に貼り、団地を訪ねた復興支援ボランティアの人々による寄せ書きなどを持って記念撮影し、感謝を発信しながら別れを惜しんだ。
 住民や復興支援ボランティアとのふれあいが繰り広げられた集会所は、使われなくなって久しく床にはほこりも。誰が言うとでもなく4人はほうきを持ち、いとおしむような表情で掃き清め、思い出話に花を咲かせた。
 寝具が段ボール箱やカーテンだった避難所から移って布団で寝た時の安らぎ、定期的に足を運んでくれたボランティアとの交流、生活を支えてくれた顔も知らぬ海外の人々への謝意──。それぞれが笑顔で語った。家族で暮らすには狭く、夏暑く冬寒いといった、プレハブ仮設への不満はほとんど聞かれなかった。そんな声に耳を傾け、ほんのいっときではあるが自分も味わった、仮設暮らし当初に感じたありがたみについて、思い返すことができた。
 応急仮設は順次解体されているが、同市では米崎町の旧米崎中校庭に整備された神田団地の2棟8戸について、「3・11仮設住宅体験館」として残す。宿泊ができるようにして、「仮設暮らし」を体験してもらおうとの狙いだ。実際に暮らした人々の思いが伝わる、そんな場所になってほしいと願う。(弘)