令和3年01月26日付

 トラウマ(心的外傷)は遺伝する─初めてその話を聞いたのは、陸前高田市の姉妹都市・米国クレセントシティ市の学校を訪れた時のことだ▼まさか、と驚く一方、確かに納得できるだけのケースが被災地にはあるとも思い当たった▼トラウマとは普通、衝撃的な出来事や悲劇を体験した人の心の傷であり、後天的に受けた形質のはずだ▼だが、心的外傷は遺伝子情報に〝タグづけ〟され、その女性が生んだ子どもの精神や肉体にも影響をもたらすことがあるという。米国の教育現場でもこの「トランスジェネレーショナル・トラウマ」への対応が課題になっていると聞いた▼沿岸部では、心のケアを必要とする「要サポート」の児童・生徒が内陸部より多いというだけでなく、震災後に生まれた児童の間でもなぜか高い割合を示している▼むろん、不安定な環境で育っていることや、二次的外傷性ストレスも要因として考えられるが、クレセントシティの教育委員会は遺伝的形質の可能性も考慮に入れるべきと指摘する▼いずれにしろ、子どもの心のケアの必要性はいまなお高い。県は来年度、臨床心理士らが沿岸部に住み、児童・生徒の心のケアにあたる巡回型カウンセラー制度を継続する方針だ▼まだ小さな子らの心も、思いがけぬ形で傷ついているのかもしれない。長い目で注意深く見守っていくことが肝要だ。