令和7年04月30日付
介護現場の賃上げを巡って、財務省が「処遇改善より〝選ばれる職場〟を」と強調したという▼賃金が低く処遇が悪ければ〝選ばれる職場〟にはなりえないのだが、そんな根本の問題から目をそらした発言である▼賃上げすべきではないとする理由も「生産年齢人口が減少している中、介護分野にだけ人材が集中するのはよろしくない」というのだから笑える▼一度でいい、介護現場に人が集中するような施策を打ってから言ってほしい。「既存の人材を大切にし、職場環境を整え、介護事業の質を上げれば良い」と適当にお茶をにごすだけではなく▼同省の「介護職の賃上げは社会保障費の膨張につながるから難しい」という弁はもっともらしく聞こえる。だが現場は「介護報酬を引き上げることで削減できる医療費があり、むしろ全体のコストは抑えられる」と指摘する▼同じ社会保障の中でも、介護費は医療費の3分の1程度にとどまる▼そして医療費膨張には、介護現場に人がいないため「次の暮らし」を見通せず退院させられない患者が多いという背景がある▼制度の持続性を議論する時、同省はどこを削るか・いかに使わないかの話ばかりする。急がば回れとか損して得取れといった大局観がないのだ▼頼むから「どこにお金をかければより大きな支出を抑えられるか」という、構造的視点を持ってほしい。