令和5年12月06日付

 小学校の国語の教科書に、今も載っているのだろうか。アーノルド・ローベルの「お手がみ」は▼かえる君・がま君と聞けば思い出す方も多かろう。仲良しのカエル二人が登場し、子どもから大人まで愛される幼年童話の傑作シリーズだ▼「お手がみ」はシリーズ第1作『ふたりはともだち』に収録された一編。小1で習うため、大半の子どもが初めて触れる外国文学作品ということにもなろうか▼同作を翻訳した、詩人で作家の三木卓氏が先日、88歳で逝去した▼一度も手紙をもらったことがないというがま君の悲しみを知ったかえる君は、がま君を喜ばせたくて手紙を書き、かたつむり君に託す。がま君はかえる君が手紙を書いてくれたと知ってとても幸福な気持ちになり、かえる君もそんな親友の姿に幸せを覚えながら、二人一緒に配達を待つ―▼友達というのは、うれしい時も悲しい時も、ただ隣に座って思いを分かち合ってくれるものなのだと幼心に知った。年を重ねた今、そういう友達がいるありがたさを改めてかみしめる▼「ローベルさんの絵本は子どもたちのためのものですけれど、一生付き合えるような深さと面白さを持っています」という生前の三木氏の言葉に、深くうなずく▼名作を日本へ紹介してくれた同氏に感謝しながら…なんだか、しばらく会えていない友人たちに連絡を取りたくなった。