JR 鉄路復旧を断念、BRTを正式提案/東京で大船渡線沿線自治体首長会議
平成27年7月25日付 1面

国土交通省による第2回JR大船渡線沿線自治体首長会議は24日、 東京都の同省で行われた。東日本大震災以降、気仙沼~盛駅間でBRT(バス高速輸送システム)による仮復旧運行が続く大船渡線。JR東日本は気仙両市の首長らに対し、震災前から続く乗客数減少や多額の整備費といった課題を挙げ、BRTでの復旧を正式提案。鉄路は断念し、BRTによって高校生に合わせたルー ト検討なども進めながら、利便性向上を図る姿勢を示した。各首長はBRTが持続可能な交通手段であることには理解を示しつつも、地元での協議をふまえて対応を固め、結論を年内に出す意向を明らかにした。
気仙両市長は理解「結論年内に」
沿線自治体首長会議は、先月5日以来の開催。座長を務める西村明宏国交副大臣のほか、戸田公明大船渡市長、戸羽太陸前高田市長、菅原茂気仙沼市長、千葉茂樹岩手県副知事、三浦秀一宮城県副知事、JR東日本の深澤祐二副社長、藤田耕三国土交通省鉄道局長、菱田一復興庁統括官の計9人で構成している。
会議は冒頭を除き非公開で行われ、約1時間で終了。戸田大船渡市長は記者団に対し「地域公共交通の専門事業者であるJRから、重たい提案が示された。責任ある事業者として、ベストの提案をされたと認識している」とコメント。

震災以降休止が続くJR線の鉄路。近接する国道343号ではBRTが運行を続ける=陸前高田
戸羽陸前高田市長は「この議論だけを置き去りにして、まちづくりを進めることはできない。どの自治体でも、持続可能な公共交通確保は難しい。JRからは、これ(BRT)であれば持続可能であるとの提案だったと認識している」と語った。
両首長とも提案内容を広く周知し、議会や地域住民からの意見をふまえて対応を固め、年内に結論をまとめたい意向を明らかにした。議論ではJR側から、通学利用の高校生や地域事情に配慮し、現ルートからの「延伸」も含めて検討する姿勢が示されたという。
西村副大臣は「必ずまとまるかどうかは微妙だが、(年内をめどとする)次回会議で結論を出せればベストだと思う」、JRの深澤副社長は「鉄道は大量輸送が いちばんの特徴であり、復旧に多額の金額がかかるといった点も勘案した。鉄路での復旧は責任を持っては提案できない。BRTで、地域の交通を引き続き担っ ていきたい」と述べた。
終了後、同省鉄道局担当者が会議内容を説明。JR側は震災以降、復旧・復興の歩みに合わせながらBRT運行を続けてきた実績に言及。仙台などにつながる三陸沿岸道路整備も進む中、これからの地域交通活性化や交流人口増、産業振興に柔軟に対応していきたいとの考えを掲げ「復興に貢献する持続可能な交通手段」として、BRTを提案。鉄路での復旧断念を伝えたという。
JR側はこれまで、現状ルートでの鉄路復旧費は約130億円、安全やまちづくりを考慮した米崎、小友両地区などの高台部を通るルートは約400億円との概算を説明。JRは現行ルート復旧では安全は確保できないとし、整備差額の約270億円は国や自治体からの支援を要請してきた。一方、国はJRは黒字企業であることから整備差額への支援は難しいとの考えを貫いてきた。
前回会議では、気仙沼~盛駅間における東日本大震災前後の輸送密度推移にも言及。昭和63年度は1日あたり1349人。その後減少が続き、平成21年度は453人。公共交通としての大船渡線の優位は低下し「鉄道の特性を発揮できる水準とは言い難い」との考え方から、鉄路復旧に消極的な姿勢を崩さなかった。
これまで各自治体は、鉄路復旧を前提としたまちづくりを展開。しかし発災から5年目に入り市街地部の基盤整備が進む中、気仙両市の首長は早期に結論をまとめたいとの意向も示していた。