基本設計検討が始動、32年度一部供用見据え/高田松原津波復興祈念公園

▲ 復旧・復興事業後は公園に生まれ変わる高田松原地区=陸前高田

 東日本大震災で壊滅的な被害を受けた陸前高田市の高田松原に整備する津波復興祈念公園の基本設計に向け、有識者委員会が始動した。今後、委員会の下に公園における空間デザインや、市民や各種団体による協働での管理・運営体制、震災伝承の各分野に分かれたワーキンググループ(WG)が組織され、基本計画をつくる中で浮き彫りになった課題検討などにあたる。基本設計は年度内の確定を目指し、28年度以降の整備につなげる。

 

 有識者委員会の初会合は、盛岡市内で5日に開かれた。祈念公園の計画・設計などの検討を進める組織で、県知事が委員を委嘱。委員長は中井検裕東京工業大学大学院社会理工学研究科教授、副委員長は涌井史郎東京都市大学環境学部教授、委員は篠沢健太工学院大学建築学部教授と広田純一岩手大学農学部教授、南正昭岩手大学地域防災研究センター長・教授、戸羽太陸前高田市長が務める。

検討方針などを確認した初の有識者委員会=盛岡市

検討方針などを確認した初の有識者委員会=盛岡市

 南氏を除く5人は、前年度設けられた復興祈念公園基本計画検討調査有識者委員会にも所属。南氏は高田、今泉両地区の区画整理審議会の会長職にも就いている。
 市によると、議事では公園基本計画案や、今後の検討方針案を確認。基本計画案は前年度に練り上げられ、今年4月から5月にかけての意見募集をふまえ、現在は策定の最終段階を迎える。
 公園区域は震災浸水区域約130㌶に及ぶ。約2㌔にわたる白砂青松の高田松原に加え、震災遺構として残る気仙中校舎や国道45号より山側の下宿定住促進住宅も含む。計画案では震災の追悼と鎮魂、未来への展望、かつての郷土風景の継承、人とまちの安全の確保など、地元内外の人々が抱く多様な思いを受け止める公園を目指す。
 空間構成では、国道45号側に物販機能を持つ施設をはじめにぎわいを持たせ、野外活動センター跡地付近の中央部には国営の追悼・祈念施設(仮称)を配置。両機能を分ける役割を果たす「築山」を設け、中央部に静謐(せいひつ)性を確保する。
 また、築山の切り通し部から追悼・祈念施設へと進み、川原川に架かる構想の人道橋を経由して第二線堤上の「祈りの場」へと続く。国道45号より山側の北東部では、高田松原公園の運動施設や広場などの復旧を進める。
 沿岸部に位置することから、避難時は高田地区のかさ上げ市街地や今泉地区の高台市街地を目指すとし、今後詳細を検討する方針。多様な団体が参画して管理運営を進め、まちづくりとも連動する協働の考え方も盛り込まれている。
 今後、有識者委員会の下に▽空間デザイン▽協働体制検討▽震災伝承検討──の各ワーキンググループを設置。それぞれテーマに沿った具体的な検討を進める。
 空間デザインでは、道の駅を含む各施設の配置や基本設計などを検討。協働体制では市民らが参画した管理・運営体制、震災伝承では目的に沿った施設に必要な機能、展示内容などを詰める。それぞれに、地元内外の有識者・関係者を検討メンバーに迎える。
 基本計画の協議段階から続く検討事項としては、公園利用者の避難や避難路、築山の構造、全体の景観形成に加え、第二線堤上の祈りの場をどのような形で設けるかが挙がる。さらに犠牲者の氏名を示す刻銘碑のあり方やこれまであった石碑などの対応、交流人口増大や地域活性化への視点も求められる。
 各ワーキンググループでは8月以降に3、4回程度、会議を開催。各グループでの成果をもとにした第2回有識者委員会は3月ごろに開き、基本設計確定は年度内をめどとする。新年度以降設計とともに順次着工が進み、追悼・祈念施設や周辺一部地域では32年度の供用開始を見据える。