暑さのもと活況呈す、各地でイベント多彩/気仙の夏決算

▲ 市民らの道中踊りなどが繰り広げられた三陸・大船渡夏まつり。主会場には約5万人が足を運びにぎわった=大船渡市

 追悼行事もしめやかに

 

 立秋を過ぎ、連日の暑さの中にも秋の気配が漂い始めている気仙地方。今夏もさまざまなイベントが催された。大船渡市の三陸・大船渡夏まつり、陸前高田市の二大七夕、住田町でのケセンロックフェスティバルには、今年も県外からも数多くの来訪者があり、復興への活力を広く発信する機会となった。亡き人たちへの思いを込めた花火大会やお盆行事も各地で行われた。震災発生から5度目となった気仙の夏を振り返る。

 

 夏まつり、5万人の来場で活気/大船渡市

 

 大船渡市では今夏、「三陸・大船渡夏まつり」をはじめ、市内各所でさまざまなイベントが繰り広げられ、復興へと歩みを進める海のまちの活力を広く発信した。
 震災前は20万人ほどの入り込みがあった三陸・大船渡夏まつり。今年は復旧・復興工事の進展に伴い、初めて主会場を野々田岸壁港湾道路に設定して開催。
 市民ら25団体約1250人による道中踊り、復興グルメフェスティバル、花火大会などが行われ、主催の実行委によると主会場にはおよそ5万人の人出があり、にわかに活況を呈した。
 大船渡駅周辺のかさ上げ本格化で、有事の避難ルートが限られるなど課題もあり、実行委では警備・誘導に例年以上の人員を配置。けが人の報告もなく、無事故で終わった。
 このほか、盛町の「灯ろう七夕まつり」、三陸町越喜来での「オキライサマー」「三陸港まつり」などが、昨年に引き続き県内外の協力を得て開催。三陸港まつりは「三陸国際芸術祭2015」とタイアップして開かれ、海外の舞踊団体も出演するなどし、鎮魂の思いも重ねた。
 末崎町の三陸復興国立公園・碁石海岸では、先月17日から今シーズンのキャンプ場開設を始めた。三陸沿岸の国立公園再編も盛り込んだ環境省の「グリーン復興ビジョン」の一環として昨年再整備を終え、2シーズン目に入った。今年も10月までの開設を予定している。

 

 県外からの来訪今年も多く/陸前高田市

 

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かさ上げ地の間を縫うように山車運行が繰り広げられた「うごく七夕」=高田町

  陸前高田市では8月7日、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた高田地区で「うごく七夕」、今泉地区で「けんか七夕」がそれぞれ行われた。両地区とも震災前からの道路で開催できるのは、今年が最後となる可能性が高い。高田地区では山車11台が各地で運行されたほか、今泉地区では2台による激突が繰り広げられた。

 今年は平日にあたり、うごく、けんかの関係者とも「昼間よりも夕方から夜にかけての人出があった」と振り返る。山車の引き手には地域住民だけでなく、県外からのボランティアや学生の姿が目立った。
 気仙川花火大会は、震災犠牲者の月命日にあたる11日に開催。15日には矢作町下矢作地区で、昭和48年以来となる「灯篭七夕」山車の運行が行われた。同日夜には今泉地区で恒例の盆行事「気仙川川開き」もあり、地域住民が亡くなった人々への思いを寄せた。
 奇跡の一本松来訪者向け駐車場の観光物産施設「一本松茶屋」は、8月9日でオープンから1年。陸前高田地域振興㈱が運営する物産販売スペースは13~16日に帰省客らが多数詰めかけ、とくに15日は2000人以上の来訪があったとみている。
 観光客が多い5月の大型連休時は海産品が人気だが、盆時期は地元事業者が製造する菓子や飲料水の売り上げがとくに伸びた。宅配依頼も通常の5、6倍の多さで推移。地域振興では「一本松を見たあとに立ち寄るというよりも、量販店にはない品物が購入できる場所との認知が広まってきた」と語る。
 市観光物産協会内の専門部会「まるごとりくぜんたかた協議会」では、体験旅行に全国各地から10団体280人ほどの申し込みがあり、比較的大学生が多かった。ベルトコンベヤー設備をはじめとした復興事業の見学、農漁業体験などを橋渡しした。

 

 盆時期は入り込み低調に/住田町

 

 住田町では夏イベントの先陣を切り、7月18、19の両日に世田米の種山ヶ原イベント広場で野外音楽祭「ケセンロックフェスティバル(KRF)」が開かれた。期間中は大きな天気の崩れもなく、全国各地から訪れた音楽ファンらが多彩なステージと種山の自然、気仙のもてなしを堪能した。

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全国各地から多く音楽楽ファンが訪れたケセンロックフェスティバル=住田町

 同25日には、世田米商店街で「住田町夏まつり」が催された。世代を超えた地域住民や観光客、被災地支援のボランティアらが参加。さまざまなアトラクションや道中踊り、花火大会などを楽しみ、活気にわいた。
 町内の代表的な観光地として知られる、種山や上有住の滝観洞。町の第3セクター・住田観光開発㈱(千田明雄社長)によると、8月8日から16日までの入り込み数は、盆時期が土日と重なって連休が短かくなったことや前半の天候が崩れたことなどが響き、前年を下回った。
 期間中、道の駅・種山ケ原ぽらんには8700人が来訪。14~16日は1000人台で推移したが、休日の配置も影響して前年を上回ることはできなかった。盆用の生花は天候の影響もあり、欠品状態が続いた。
 滝観洞は8月上旬、2日に「滝観洞まつり」を開催し、好天や暑さも手伝って入り込み数は好調に推移していた。しかし、肝心の8~16日は雨が続いたこともあって2228人にとどまり、猛暑の影響でにぎわった前年と比べて低調だった。
 気仙川のアユ漁は、県内のトップを切って7月1日に解禁。流域には県内外から多くの太公望らが足を運び、釣りを楽しんでいる。

 猛暑日も観測厳しい暑さに/気象

 

 気仙地方を含む東北北部は7月29日ごろに梅雨明けしたとみられ、平年より1日、昨年より4日それぞれ遅かった。8月5日には、大船渡で37・0度(平年比9・8度高め)の最高気温を観測。平成19年8月15日と並んで観測史上最高となった。
 7月18日から8月16日までの大船渡をみると、夏らしく厳しい暑さの日が続いた。気温は同月上旬までは最高、最低ともに平年を上回る日が多かったが、中旬以降は暑さが落ち着き、最高が平年を下回る日もみられた。
 日中の最高気温が25度以上の日は28日観測。このうち、30度以上の「真夏日」は10日に上り、なかでも8月1日、5日、6日は35度以上の「猛暑日」となった。25度を下回ったのは、7月20日と8月14日の2日だけだった。
 まとまった雨の日もあり、8月14日の日降水量は62・5㍉を記録。短時間に激しい雨が降った日もあり、同日には最大10分間降水量で12・0㍉を観測した。
 期間中の日照時間は、7月下旬の後半から8月上旬の前半にかけて平年を上回る日が多かった。平年を下回ったのは13日。このうち、日照を全く観測しない「不照」は3日あった。