苦難乗り越え待望の着工、高田保を再建整備/陸前高田市

▲ 鍬入れの儀などを行う戸羽市長=陸前高田

 陸前高田市が発注した市立高田保育所再建整備事業建築工事の安全祈願祭は27日、高田町中和野地内の整備予定地で行われた。4年5カ月前の東日本大震災で全壊して以降、取り壊し予定だった米崎町の旧米崎保育園舎を利用し、子どもたちを受け入れてきた。被災による悲しみや厳しい施設環境下での保育を経て迎えた待望の着工で、年度内完成を目指す。関係者はさまざまな思いを寄せながら、早期の利用開始を願った。

盛り土が進むかさ上げ地を見下ろす高台に整備=同

盛り土が進むかさ上げ地を見下ろす高台に整備=同

中和野地内の高台で安全祈願祭

 

 安全祈願祭には、市や工事関係者、地権者ら約50人が参列。神事では氷上神社・熊谷守宮司による祝詞奏上や、戸羽太市長による鍬入れの儀などが行われた。

 戸羽市長は、震災時に子どもを迎えに来た住民らが犠牲になったことにふれ「悲しさから立ち上がる一つの象徴。地域のお母さんからは『いつできるの』とよく聞かれていた。笑顔が広がる場に」とあいさつ。震災前は民有地だった場所に構えることから、用地提供者らに感謝も寄せた。

 受注者を代表し、㈱長谷川建設の長谷川順一社長は「今もこれからも、震災のくやしい思いは消えない。それは被災地の建設関係者すべてが同じだと思う。子どもたちのためになることは、未来の日本のためになること」と述べ、安全施工を誓った。

 園舎設計は㈲佐藤設計。指名競争入札の結果、㈱長谷川建設・㈱平野組経常建設共同企業体が4億4604万円で請け負うことになった。再建施設は木造平屋建てで、延床面積は1167平方㍍。工期は来年3月末までとなっている。

 震災前の施設は下和野地内の現災害公営住宅東側にあったが、再建現場は山側に1㌔ほど離れた高台に位置する。各年代別の保育室に加え、遊戯室などを整備。さらに震災前にはなかった子育て支援センターも設け、母親らの相談支援充実などを図る。幼稚園機能も持つ認定子ども園としての運営を予定している。

 高田保育所は震災以降、新施設完成に伴い取り壊す予定だった旧米崎保育園舎で運営。現在は0~5歳児89人が在籍し、高田町だけでなく横田町から通う子どももいる。

 同園舎は築50年近くに達し、老朽化が進む。再建を控えるため不具合があっても我慢するなど、厳しい環境下で完成を待ち続ける。早期整備が求められていたが、財源確保や復興事業全体の土地利用計画などとの調整があり、発災から4年半目前での着工となった。

 安全祈願祭に参列した同保育所の佐々木利恵子所長は「震災1、2年後からは、建物がもつかという心配があった。今は米崎町にあり、車での送迎ばかりだが、高田町にあれば歩いて連れて来られる保護者や祖父母の方々も出てくるのでは。保護者の方々も再建を待ち望んできた」と話していた。