バンザイ・ファクトリーの「三陸甘露煮」大賞に、復興ビジネスコンテストで/陸前高田

▲ 復興ビジネスコンテストで大賞に選ばれた「三陸甘露煮」

 IT木工・製麺・甘露煮などを手がける陸前高田市米崎町の㈱バンザイ・ファクトリー(髙橋和良代表取締役)が生産している三陸甘露煮が、『「新しい東北」復興ビジネスコンテスト2015』で大賞に選ばれた。三陸の未利用資源を活用した健康配慮型の食品で、事業・取り組みの特徴、斬新さ、産業創出への影響などが評価された。同社では今回の受賞を励みに、さらなる事業拡大へと意欲をみせている。

 

 復興庁が平成25年12月に設立した「新しい東北」官民連携推進協議会では、被災地の産業復興に向けた地域産業の創出の機運醸成を図ることを目的として、同庁からの委託事業である「新しい東北」復興ビジネスコンテストを26年度から開催している。
 今年も昨年に引き続き、水産業、農林畜産業、製造業、商業・観光・サービス業、その他(エネルギー、ソーシャルビジネス、住まい・暮らしなど)を対象に被災地における地域産業の復興や地域振興に資する事業を募集した。
 髙橋代表取締役は幼少期に2年ほど陸前高田市で暮らした経験もあり、24年ほど前には㈱マイヤからの後押しを受けて会社を立ち上げ、震災の3年前まで盛岡市でIT企業を経営していた。こうした気仙とのつながりから、24年に陸前高田でバンザイ・ファクトリーを設立。
 髙橋代表取締役は震災から1年後、「海産物の加工」の研究を開始した。工場も備えた社屋は完成していたものの、当時は十分に海産物を仕入れるのは厳しい状況だった。25年冬ごろから仕入れを行い、「砂糖」と一般的な「醤油」、精錬塩を使わず、健康に配慮した煮物開発に挑んできた。
 砂糖を使用しないため保存が利かないなどの課題はあったが、希少糖や県産の甘茶、岩魚のしょっつる(魚醤)、海の塩を代用することで現在の商品にたどり着いた。
 甘露煮の種類はワカメやホタテ、鮎、ツブ貝、カキ、ウキゴリ、ホヤ、アピオスの8種類で、ほとんどは大船渡、陸前高田の素材を使用しており、「わかめの茎など、素材のなかでも未利用になる部位を使うことで生産者の副収入にも期待できる」としている。盛岡市にある直営店でメニュー提供しながら実際に食べてもらい、改良を重ねてきた。
 こうした経緯から「事業、取り組み手法の先駆性・モデル性」「地域産業に与える波及効果」「実現性、発展可能性」「事業計画の妥当性」などが評価され、7月の書類審査を通過。9月1日の2次審査ではプレゼンテーションや試食が行われ、この結果、大賞に選ばれた。
 受賞の知らせを受けた髙橋代表取締役は「被災企業ではなく、経営者も被災しているわけではない。これまで助成金や補助金の申請もすべて通らなかった。今回も1次審査も通らないだろうと思っていたので、入賞が決まった時はうれしかった」と喜びを口にする。
 「協力してくれた生産者の人たちが喜んでくれたのもうれしい。マイヤさんはじめ、お世話になった方々にもいい報告ができる」とし、「今後は大きな工場も建てて、従業員も増やしていきたい」と事業拡大を目指している。
 表彰式は12日(月)に宮城県仙台市で開かれる「新しい東北フォーラムin仙台」席上で行われる。
 三陸甘露煮は今後、11月後半から盛岡市や東京都の百貨店でお歳暮用として販売される予定。