亡き息子に姿重ね、和歌山の吉田さんが物心両面支援/赤崎町「@かたつむり」

▲ 野焼きした陶芸品を利用者らと掘り起こす吉田さん㊧=赤崎町

 大船渡市赤崎町の就労継続支援B型事業所「@(あっと)かたつむり」に毎年1カ月ほど住み込みし、施設スタッフの仕事を手伝ったり、レクリエーションを企画して利用者と交流を深めるなど物心両面の支援を続けるボランティアがいる。和歌山県和歌山市の吉田敏雄さん(68)。約20年前に19歳の若さで亡くなった吉田さんの次男も発達障がい者だったことから、「被災地の障がい者を応援すれば天国の息子も喜ぶと思う」と継続的な活動に意欲をみせる。

 

それぞれ制作した陶芸品を手にする利用者ら=同

それぞれ制作した陶芸品を手にする利用者ら=同

 「@かたつむり」は非営利型一般社団法人・かたつむり(吉田定理事長)が運営。障がい者の家族らで構成し、相互の情報交換や行事開催などを行い、一昨年に任意の団体から法人化。その後、赤崎町にプレハブの仮設事業所を建設し、現在、気仙3市町内の26人が利用している。

 吉田さんは今回、9月6日から今月7日まで滞在。趣味の日曜大工の腕を生かして施設の補修工事を行うなどした。

 和歌山陶芸クラブにも所属しており、同クラブが毎年地元で催す作品展の益金の一部も法人に寄付。昨年に続いて陶芸品づくりも開催し、利用者と一緒にカタツムリの置物をはじめ、思い思いの作品をつくり、施設そばの手づくりの堀で丁寧に焼き上げた。

 吉田さんは平成8年11月、次男の慎太郎さん(当時19)を亡くした。死因は心臓まひとみられ、それまで病気もなく元気に生活していた我が子を突然失い絶望のふちに追い詰められた。

 東日本大震災が発生し、「息子のような子やその家族が苦しんでいるかもしれない。いてもたってもいられなかった」と個人でのボランティアを決意。インターネットの震災支援者らが利用する特設サイトで、「かたつむり」の前身となる障がい者福祉施設・「すずらんとかたつむり」=陸前高田市竹駒町=の存在を知り、毎年訪れるようになった。

 利用者の和田康太さん(19)は「昨年よりも上手に陶芸品をつくることができてうれしい。とても楽しかった。吉田さんにはこれからも来てほしい」と笑みを浮かべる。

 「@かたつむり」の大西智史所長は「我々にはできないことをしてもらっている。震災後から継続して協力してもらいありがたいの一言」と感謝する。

 吉田さんは「利用者や職員の皆さんが笑顔になるたびに、天国の息子から『お父ちゃん、よくやった』と言われているような気がする。これからも来続けます」と力強く語る。