復興へ向かう活力に、高田と広田で〝五年祭〟/陸前高田
平成27年10月12日付 1面


陸前高田市高田町に鎮座する氷上神社(熊谷守宮司)と天照御祖神社(本多修宮司)の合同復興祈願式年大祭、広田町に鎮座する黒崎神社(荒木眞幸宮司)の式年大祭が11日、各町で挙行された。いずれも復興へ突き進む過渡期に執り行われる大切な〝五年祭〟で、住民たちは被災した地域の清めとさらなる発展を願った。
地域の完全再生祈り神輿が渡る/高田町
高田町では同日午前9時過ぎ、氷上神社と天照御祖神社それぞれから神輿(みこし)行列が出発。現在はかさ上げなどの復旧工事に伴い町内各所が通行止めとなっているため、町なかでの渡御は行わず、高田小に開設された御旅所へとまっすぐ向かった。
両神社の式年大祭は5年に一度の実施。前回は東日本大震災発生前年の平成22年に執り行われた。
以前は神輿行列のほか、複数の町内会が有する「風流山車」が4台運行、女性たちによる手踊りの練り歩きなど、華やかな祭り絵巻が繰り広げられていた同祭。大津波で町の様子が一変しただけでなく、名物だった豪華な山車も流失し、それらを再建するまでには町の〝体力〟も回復していない。
大祭執行に伴い、総代会と協賛会は当初、両神社からみこしを出し、祭儀だけ執り行うという最低限のものを計画。余興奉納には有志団体を募り、今回は大石町内会の虎舞、和野祭組の氷上権現舞、同市の太鼓団体・氷上共鳴会が出演し演舞を行った。
前回までの絢爛(けんらん)豪華な祭りを知る住民からは「やっぱり寂しいね」という声も聞かれたが、この日は小雨が降ったりやんだりの空模様ながら本降りにはならず、みこしも無事に還幸。氷上神社の熊谷宮司(70)は「やれる限りのことをし、まがりなりにも祭りを執り行えた。皆さんが頑張ってくれることで、神様も元気になり、地域へ活力を与えてくださる。この祭りを励みとして、いつかまた昔のような大祭を取り戻すことができれば」と語り、地域の協力に感謝を示した。
伝統芸能を奉納し鎮魂願う/広田町
広田町の黒崎神社一帯で催された例祭では、町内各地区の祭組が伝統芸能を奉納し、震災犠牲者の鎮魂や復興を願った。
震災が発生した平成23年の10月には復興祈願祭と銘打った祭りが開かれ、神輿が町内各地を回って早期復興を祈願。今年も、例大祭前日の10日に神輿渡御が行われた。
例大祭はあいにくの雨模様となったが、会場には多くの地域住民が詰めかけた。奉納では、広田小学校児童による広田御祝いを皮切りに、市の無形民俗文化財である根岬梯子虎舞をはじめ、各祭組が七福神や虎舞、創作太鼓を披露。市外の団体も参加して太鼓や手踊り、よさこいなどで祭に華を添えた。
このうち、根岬梯子虎舞組は、およそ50年ぶりに新調した梯子を使って演舞を奉納。2頭の唐獅子と3人の才防が、長さ約20㍍、計49段の梯子を舞台に勇壮な舞をみせると、来場者から絶え間ない大きな拍手が送られた。
同組の菅野将明さん(42)は、28〜29歳のころから梯子虎舞に参加しているといい、昨年の鶴樹神社例大祭以来、1年ぶりに頭を務めた。2週間前から、一日2時間ほどの練習に励んできたといい「新たなスタートという特別な気持ち。きょうは広田が一つになる一日なので、大成功で終わりたい」と話していた。
同日は神社から三鏡漁港までの神輿渡御も行われた。黒崎神社例大祭・祭典実行委員会の津田賀一委員長は「町内では高台移転などが始まっている。みなさんに一日も早く前向きに、元気になって進んでいただきたい」と、例大祭へ込めた思いを語った。