気仙三観音、すべて県文化財に、観音寺と常膳寺の秘仏/県教委に答申
平成27年10月16日付 7面

観音寺の木造六臂十一面観音菩薩立像㊥、木造天部形立像㊧、木造観音菩薩立像=東北歴史博物館提供

常膳寺所有の木造十一面観音菩薩立像=同
陸前高田の4体指定へ
陸前高田市矢作町の観音寺(長根祐範住職)が所有する「木造六臂十一面観音菩薩立像」「木造天部形立像(伝毘沙門天)」「木造観音菩薩立像(伝虚空蔵菩薩)」と、小友町の常膳寺(小林信雄住職)所有の「木造十一面観音菩薩立像」の仏像計4体について、県文化財保護審議会は県文化財に指定するよう県教委に答申した。正式指定は来月の見込み。大船渡市猪川町・長谷寺(宮城隆照住職)の猪川観音に続き気仙三観音すべてが県文化財となる。
長谷寺の十一面観音立像(猪川観音)、常膳寺の十一面観音立像(小友観音)、観音寺の十一面観音立像(矢作観音)は、古くから「気仙三観音」として信仰を集めてきた。いずれも巨像で、坂上田村麻呂による蝦夷征伐にゆかりのある古仏。当地を治めていた〝三鬼〟(金犬丸、早虎、熊井)の首塚に観音堂を建立し、観音像を安置したといわれている。
小友と矢作の両観音は秘仏とされ、33年に1度のご開帳、17年に1度の中開帳以外は公開されていない。猪川では観音堂脇の守蔵庫に収められ、事前の申し込みに合わせて開帳される。平成24年10月に東日本大震災の復興を祈願し、初めて一斉開帳が実現した。
県教委などによると、観音寺所有の3体がつくられた年代は平安時代(12世紀)。厨子内に安置される3体のうち、中央像が観音菩薩立像。一木造で、像高は現状で3㍍を超え、この時代で県内では盛岡市・東楽寺の十一面観音菩薩立像に次ぐ像高という。
右目尻がやや吊り上がり、厳しい表情をみせるが、総じて抑揚を抑えた穏やかな作風は、同時代末期作の典型。内陸部に比べて古代彫刻の作例が少ない沿岸部を代表する像としても評価される。
伝毘沙門天は右方像。一木造で、像高は8尺8寸(2・67㍍)を超える。全体的に太造りで、武装天部像の強大な威力や存在感を誇示しているとみられる。左方像の伝虚空蔵菩薩も一木造で、像高は7尺5寸(2・29㍍)を超える。左手には蓮台付宝珠があり、右は全指を曲げて三鈷剣を持つ。
長根住職(77)は「文化財指定になってほしいという思いは以前からあった。大変うれしいことではあるが、今まで以上に管理責任に重みを感じる。指定に合わせた御開帳も検討したい」と語る。
常膳寺観音堂の本尊である木造十一面観音菩薩立像本体は室町時代(15~16世紀)の作で寄木造り、像高は3・2㍍を超える。卵形の大きな頭部、腰高で垂直性が強調されたプロポーションが特徴的。着衣などの彫りは入念で、個性豊かな作風となっている。
近世岩手の歴史文化を多様で豊かなものとした作例群の先がけとしても、価値が高い。これほどの巨像を制作・安置する社会状況、寄木造りという木材製品の製造・流通、先進的工法を採用する社会基盤など、沿岸部の社会背景がうかがえる点も、高い評価の一因となっている。
今回答申されたのは仏像の彫刻4件と、「時鐘 南部盛岡城楼鐘」「時鐘 奥州路磐手郡盛岡城北更鐘」の工芸品2件。すべて指定となれば、文化財は計379件に。このうち、同市内は15件となる。