熱き思い 一打に込めて、陸前高田で全国太鼓フェスティバル(別写真あり)
平成27年10月20日付 1面

陸前高田市の手づくりイベント・全国太鼓フェスティバル(実行委主催)は18日、市立第一中学校体育館で開かれた。今年舞台に立ったのは、高い技術と表現力を誇る創作太鼓や、被災後も懸命に守り続けてきた地域の伝統芸能、復興へと進む中で生まれた絆から出演を果たした県内外の計9団体。訪れた地域住民は、さまざまな思いが込められた一打一打から生まれる熱き鼓動を堪能しながら、あすを生きる活力や元気を受け取った。
響き渡る創造と伝統、県内外から9団体出演
「太鼓の里 陸前高田」を目指し、さまざまな支援や激励に対する「ありがとう」の気持ちを届けるイベントとして、市民有志らによる実行委(熊谷政之会長)が中心となって準備。市政施行60周年記念事業としても位置づけられた今年は、約500人が詰めかけた。
演奏に先立ち、熊谷会長は「震災があって1年休み、再開後も厳しい実行委の運営が続いているが、楽しく開催していきたい」とあいさつ。戸羽太市長のしょっきり太鼓が開幕を告げた。
出演したのは登場順に大船渡東高校太鼓部(大船渡市)八丈太鼓六人会(東京都・八丈島八丈町)橘太鼓「響座」(宮崎県宮崎市)城山虎舞(大槌町)気仙町けんか七夕太鼓(陸前高田市)長安寺太鼓(大船渡市)蘭導(秋田県大仙市)名古屋市立楠中学校和楽器部(愛知県県名古屋市)ZI─PANG(埼玉県上尾市)。司会役は、フリーアナウンサーの高橋佳代子さんらが務めた。

約500人が迫力の舞台を堪能=同
このうち響座は、今年開かれた第17回日本太鼓ジュニアコンクールで最優秀賞に選ばれたジュニアチームメンバーも参加。震災前年の平成22年以来となる太鼓フェスでのステージで、岩切国光座長(50)は披露前に「ただいま」と声を響かせた。
5年前のステージでは、アンコールに応えたあと「来年また呼んでください」と言葉を残したが、翌年東日本大震災が襲った。響座は発災2カ月後に宮崎県内でコンサートを開き、会場で寄せられた善意をもとに大締太鼓を陸前高田に贈呈。本年度もしょっきり太鼓には、この太鼓が使われた。
息の合った力強い音色は、感動を呼んだ。最前列に座った大船渡市猪川町の仮設住宅で暮らす木下キヨ子さん(71)は、友人と一緒に震災以降初めて訪れた。「涙が止まらなかった。本当に来てよかった。あしたからまた頑張らなきゃ、と思った」と笑顔を見せた。
約束を果たした岩切座長は「場所は小さくなったが、実行委の皆さんの太鼓への思いや、受け入れの温かさは変わっていない。陸前高田の太鼓フェスは、テレビ番組で目にしてからずっと憧れていた場。また来たい」と話していた。
県外だけでなく、地元団体も躍動。気仙町けんか七夕太鼓は、将来を担う高校生が前列に立ち、勇壮なばちさばきを見せた。被災で道具一式を失った城山虎舞は、浜どころ特有の気風の良さをステージから発信し、活気をもたらした。
太鼓フェスは発災年、混乱の最中にあり陸前高田での開催は断念したが、名古屋市での「陸前高田太鼓フェスティバルinナゴヤドーム」で全国各地からの支援に感謝の意を示した。同市と陸前高田市は昨年「兄弟協定」を締結。絆の証として名古屋から訪れた楠中生も、早期復興の願いを込めながら演じ切った。
来場者はフロア上にゆったりと足を伸ばして堪能。体育館そばに設けられたテントでは地元産品の販売が行われ、好評を博した。