当初計画から大幅縮小、かさ上げ端部の地盤改良着手/陸前高田市
平成27年10月21日付 1面

陸前高田市は20日、市議会全員協議会で高田、今泉両地区被災市街地復興土地区画整理事業での盛土工事に関する地盤改良の見通しを示した。すべり防止の地盤改良は当初、かさ上げ端部全域で行う計画だったが、さらに踏み込んだ解析と検討を行った結果、両地区合わせた対象地延長は1900㍍、当初計画比の4分の1程度に縮小する。今月から工事は始まっており、来年10月までを予定している。
再解析「安全確保できる」
高田地区では最大で高さ11㍍、今泉地区では最大7㍍の盛り土を行う計画。気仙は大きな地震頻度が比較的多い中、再建を考える住民は盛土地盤の強度確保にも関心が高い。
市は昨年3月、高田地区ではボーリング調査を200㍍間隔で50カ所、今泉地区では18カ所で行ったと説明。大地震や中地震時を想定した解析を行った結果、両地区それぞれのかさ上げ端部で「すべり対策」を行い、盛り土部分の安全性を確保するとしていた。
当初計画では、高田地区は土地利用計画でJR大船渡線鉄路が描かれている端部や川原川沿いが対象で、延長は4390㍍。今回の見直しを受け、川原川沿いと気仙川に近い西側の計4カ所での施工にとどめ、延長は1290㍍となる。
今泉地区は気仙川堤防沿いや建物整備が可能なかさ上げ地沿いが対象で、当初計画は3230㍍。見直しにより、同じく4カ所での施工に抑え、延長は610㍍とする。
説明によると、市は詳細設計を行うため、ボーリング調査等を追加。今年3~7月には、いずれも地盤工学が専門の安田進東京電機大学教授と風間基樹東北大学教授、市、UR都市機構、施工する清水JVによる技術検討会で今後の方向性をまとめた。
両地区とも花こう岩を基盤岩としており、その上部に堆積する砂層や粘土層を細かく解析。その結果、砂質や粘土層の中にも高い強度のものが多く含まれることが分かり、縮小しても安全性を確保できると判断した。工期や事業費の圧縮が期待できるという。
高田地区では「深層混合処理工法」を計画。杭を入れて軟弱土とセメント固化材などをかくはん・混合し、地盤強化を図る。すべり抵抗力の増加や液状化防止につながる。
今泉地区でも同工法を中心に計画。ただ、堤防に近い低地部盛り土沿いのうち、住宅地以外の用途になる169㍍に関しては「軽量盛土」で地盤への負荷軽減を図る。
かさ上げ宅地の強度に関しては高台部と同様、造成完了後はスウェーデン式サウンディング調査と呼ばれる方式で1区画ごとに測定。盛土部は2カ所で行う。管理基準は建築基準法上、一戸建てを布基礎で建築することが可能な地盤の長期許容応力度(1平方㍍あたり30㌔ニュートン以上)とする。
造成工事では盛土を行ったあと、上下水道や道路工事などに入る。これまで行った試験盛土のうち、平均盛土高約11㍍の大石沖では、最大沈下量は25㌢、収束期間は3カ月。沈下は上下水道などの整備期間中にほぼ完了し、住宅などの建築着工前に安定するとみている。
高田地区のかさ上げ部のうち、大型商業施設など津波復興拠点施設に関しては、本年度内には建築可能な状況となる見込み。住宅早期再建エリアは29年度、そのほかは30年度としている。
今泉地区では、まず災害公営住宅予定地で本年度末から順次建築着工が可能に。商業系エリアや、ほかのかさ上げ地は29年度後半以降となっている。両地区の地盤改良工事対象地は別図。