出生率は2・10目標、人口ビジョンと戦略案示す/大船渡市

▲ 人口ビジョンと総合戦略の案が示された総合計画審議会=大船渡市

 大船渡市は策定作業を進めている市人口ビジョンと、まち・ひと・しごと創生総合戦略(平成27~31年度)の案をまとめ、19、20の両日に市議会と市総合計画審議会(会長・齊藤俊明大船渡商工会議所会頭)に提示して意見を求めた。人口ビジョンでは減少への一定の歯止めとして、平成37年(2025)までに合計特殊出生率2・10の達成を目指すと掲げた。この土台構築にも向けた総合戦略では、数値目標を設定しながら働く場の確保や子育てしやすい環境づくり、交流人口の増大などに取り組むとしており、年内にも内容を固める方針だ。

 同市では人口ビジョンと総合戦略について、震災後の状況を踏まえた市総合計画基本構想(23~32年度)と同計画後期基本計画(28~32年度)の見直しや策定と連動させて検討を進めてきた。

 このうち、人口ビジョンは72年(2060)までを対象期間とし、総人口などの将来展望や基本的な施策の方向性を盛り込むもの。

 同市の人口は9月末現在で3万8559人。国立人口問題・社会保障研究所(人社研)の推計では、合計特殊出生率、社会増減とも緩やかに減少して、72年には1万6175人になるとしている。

 これに対して「一定の歯止め」を目指す案では、72年で2万1802人と目標を設定。震災後見られる社会増減の均衡維持と、22年で1・49の合計特殊出生率を32年に1・80、37年に2・10まで引き上げ、以降維持していくとしている。

 出生率2・10は、人口が長期的に増えも減りもせず一定となる水準。国全体として第2次ベビーブーム(昭和46~49年)並みの高さだが、「地方創生の進展に伴う各種の取り組みが追い風となり、これから5年間の状況次第で十分視野に入ってくるものと考えられる」とみている。

 総合戦略は、この達成に向けた土台づくりとして、▽しごとをつくり、安心して働けるようにする▽新しい人の流れをつくる▽安心して家庭を築き、子どもを産み育てられるようにする▽生涯暮らし続けられる地域をつくる──の四つを基本目標に掲げ、総合計画の「重点プロジェクト」に位置付けて取り組む。

 水産業の連携強化促進、テレワーク導入促進、震災を機に生まれた交流の継続・発展、出会いと結婚の応援といった各種事業を展開するとし、基盤産業純生産額、起業・創業件数、観光入り込み客数、移住者数、首都圏での大船渡の認知度、婚活支援による結婚成立件数などの目標値を設定。

 委員や議員からは「復興を機とした交流拡大はこの5年間が大きなチャンス。取り組み充実を」「観光誘客の柱が見えない」「移住者へのメリットを打ち出してもいいのでは」といった提言や指摘があがった。

 市ではこれらも踏まえながら年内にも内容を固める考え。戸田公明市長は「市民運動として盛り上げ、目標への到達度合いを1年ごと確認し、試行錯誤を繰り返しながら取り組んでいきたい」としている。