復興祈念公園見据え、初の協働ワークショップ/高田松原(別写真あり)

▲ 将来の高田松原を思い描きながら議論=陸前高田

 県や国、陸前高田市が連携しながら進めている高田松原津波復興祈念公園整備に向けた初の市民協働ワークショップは20日夜、同市役所で行われた。市民ら約70人が参加し、現在同地区で進められている養浜や松林再生をはじめとした大規模な復旧事業、公園整備計画などで意見交換。避難路の重要性や交流人口の拡大、教訓の発信など、今後より深く考えるべき検討課題が次々と浮かび上がった。

 

避難路、活性化…盛んに議論

 

 津波復興祈念公園は、被災前の高田松原公園(約70㌶)に気仙川右岸(旧気仙中学校)、旧野外活動センター、古川沼の北側を加えた区域で、面積は約130㌶。被災前にはなかった「追悼・鎮魂」「教訓の伝承」「復興への意思発信」などの機能・役割が加わる。国営追悼・祈念施設(仮称)や震災津波伝承施設などが整備されるほか、野球場やサッカー場の復旧なども盛り込まれている。

 有識者による検討や市民説明会、意見募集などを経て、今年8月に基本計画を公表。各種整備に加え、平成32年度からの公園一部開園までに、段階的に市民や各種団体などとの協働による管理運営体制の構築を目指すとしている。

 今回のワークショップは、県と市が主催。本年度発足した復興祈念公園有識者委員会の下に設置された協働体制検討ワーキンググループの幹事を務める広田純一岩手大学農学部教授や各委員、行政関係者が出席。さらに高田一中生を含め、事前に申し込んだ地域住民ら約50人が参加した。

 前半は「公園を知ろう」として、公園にかかわる復旧・復興事業の状況を確認。その後9グループに分かれ、各種整備に対する疑問点や、今後の公園づくりに求められる視点などを出し合った。

 避難路に関しては、ほとんどのグループが指摘。基本計画では、二度逃げできる高台やかさ上げ地への徒歩による避難を原則に、避難路整備や避難誘導のあり方について検討するとしている。

 出席者からは「もっと避難路を」「必ず人口減少社会になる。人を寄せる公園でなければならない。来た人たちが安全に逃げ切ることが重要」といった意見のほか、車が行き交う国道45号をスムーズに横断できる歩道橋のような整備を求める声も。「車を流された人々はその後の生活で不便をきたした。車での避難を前提に考えることも必要では」との問題提起もあった。

 古川沼については複数のグループが「再生に向けた整備の前に、行方不明者の捜索を」と要望。「震災遺構の役割を明確に」「津波は川をさかのぼり、甚大な被害をもたらしたことの伝承も必要」をはじめ、教訓を伝えるあり方に一石を投じる発言も出た。

 公園の将来像では、かさ上げ地に設けられる中心市街地と連動したにぎわいづくりが話題に。「人々がマツの成長を楽しめるような環境を」「人と水とのふれあいをテーマに」「自分たちが公園をつくったという実感が必要」「防災について深く考える施設を」「ゆっくりと癒される場はどの辺りになるか」「荒天や雨、冬時期のにぎわい創出策は」など、幅広い観点からの意見が集まった。

 進行役を務めた広田教授は「率直な意見が多く出たことは良かった。人を集める以上、確実に来た人が逃げられる避難路がなければ、市民らが守り育てる公園にはなっていかないということだろう。このほかにも利活用のあり方、防災教育も検討すべき課題として出てきた。次回以降も、充実した議論になれば」と話した。

 ワークショップは、年度内に3回の開催を計画。2回目は「どんな利活用ができるだろう」、3回目は「すぐ始められる取り組みを探そう」とし、開催日は未定だがその都度参加募集を行うという。