「たかたのゆめ」食べ比べ、初の食味官能試験/陸前高田(動画、別写真あり)

▲ 同じ炊飯器で炊いた基準米と比較し、5種類の味や粘りなどを評価=陸前高田

 陸前高田市の「たかたのゆめ」ブランド化研究会(佐藤信一会長)による初の食味官能試験は28日、高田町の市コミュニティホールで開かれた。品種に合った栽培手法確立を見据え、本年度は市内3カ所に実証水田を設置。地域や施肥などが異なる「たかたのゆめ」を食べ比べ、味や香りを評価した。機器計測による品質調査データも示され、参加者はさらなるおいしさ発信に向けた意識を高めた。

 

 五感の評価 栽培手法に生かす

 

 販路拡大や高品質化への戦略を検討する同研究会は、昨年11月に発足。生産者や農業団体、普及・販路拡大を後押ししてきた市内外の民間企業関係者らで構成している。
 「たかたのゆめ」は本年度、市内のコメ作付面積の15%にあたる52㌶で生産。復旧田は約40㌶を占める。生育が芳しくなかった水田を除き、農薬や化学窒素肥料を抑えた特別栽培米として生産した。
 また、品種を開発したJT(日本たばこ産業)植物イノベーションセンターの支援を受け、高田町、広田町、横田町の3カ所に実証水田を整備。標準的な農法に加え▽穂肥を2回行う(通常は1回)▽穂肥を遅らせる▽さらに農薬を減らす▽株間を広げる──を試した。さらに、前年度多くの水田で行っていた慣行栽培も行った。
 試験には生産者や市、県の関係者ら10人余りが参加。佐藤会長は「実りの秋を迎え、順調に収穫が進んだ。本物のブランドになるよう育てたい」とあいさつした。
 食味官能試験は、実際に食べた人間の五感で食味評価を行う。基準米と比較しながら食べ比べる相対法で評価する。
 この日は同じ種類の炊飯器6台が並び、1皿の外側に5種類、中央部には基準米を盛りつけた。試食では基準米を挟みながら1種類ずつ口に運び、外観や香り、味、粘り、硬さ、総合性などを判断する。食味評価の中では最も標準的とされる、穀物検定協会の食味試験実施要領に準拠した形で行った。
 参加者は慣れない作業や微妙な違いの判別に苦労しながらも、真剣な表情で挑戦。5種類それぞれの評価を所定用紙に書き込んだあと、試食したコメの〝正体〟が明かされた。
 基準米となったのは、慣行栽培米。食べ比べたのは▽特別栽培3地区混合▽市内産ひとめぼれ▽横田・穂肥2回▽広田・株間を広げる▽高田・特別栽培米──だった。評価集計の結果、同地区の復旧田で育てた特別栽培米が外観や硬さで高評価を得た。
 一方、成分分析などによる品質調査結果では高田地区だけでなく3地区混合でも「ひとめぼれ」以上の品質評価値(玄米)となった。参加者は高値取引などが期待できる品質面に加え、10㌃あたりの収量も確認。参加者は評価を通じ、消費者に広く認知され、生産者の所得向上につながる栽培方法確立への意欲を膨らませた。