寄り添い、つなぐ地域の宝/きょうまで民俗芸能学会住田大会(別写真あり)

▲ 基調講演などが行われた民俗芸能学会住田大会=農林会館

 平成27年度民俗芸能学会岩手県住田大会は2日目の31日、住田町農林会館でメーンプログラムとなる研究発表、シンポジウムを展開した。会場には関係者や一般ら約130人が参加。郷土芸能、民俗芸能における東日本大震災からの復興、継承のあり方を探る各種プログラムを通じ、地域の宝である郷土芸能を改めて見つめ直すとともに、今後も寄り添いながら次世代へつないでいこうと誓い合った。大会は1日まで開かれる。

 

復興、継承のあり方探る

 

 同学会は、民俗芸能の研究を志す人々の交流と研さんの場として議論し、民俗芸能の伝承者とともにその生き方を考えていこうと、研究や調査に取り組んでいる。住田大会は同町の町制60周年を記念し、震災から5年目を迎えた被災地の現状と、住田の歴史や多彩な郷土芸能に理解を深めてもらおうと開催。町、町教育委員会、一般社団法人ケセンきらめき大学が共催した。

 全国から関係者ら30人余りが参加。初日の30日は宮城県気仙沼市から陸前高田市、大船渡市を震災語り部のガイドを受けながら視察し、同市末崎町の熊野神社宵宮祭で気仙法印神楽を見学した。

 31日の研究発表とシンポジウムは町文化産業まつりの関連行事でもあり、一般住民も参加。大会実行委員長の菊池宏町教育長は「大変貴重な一日。ぜひ実りある大会にしてほしい」とあいさつした。

 研究発表には、陸前高田市郷土芸能連絡協議会長の千田信男氏、住田町教育委員会の佐々木喜之氏ら4人が登壇。千田氏は「陸前高田の被災と芸能」として、復興への歩みの中で地域住民と郷土芸能がどのようにかかわってきたかを述べ、佐々木氏は「住田の文化と芸能」と題し、町内に伝わる多彩な芸能を地域の宝として伝承していく必要性を語った。

 休憩後は横澤孝副町長の歓迎あいさつに続き、シンポジウムを展開。前半は東北文化財映像研究所長の阿部武司氏が「被災から伝承へ」と題し、映像による基調講演を行った。

 阿部氏は「映像記録は同じように見えるが、その中から発見できることがいっぱいある。それを後世に残すことで、大きな災害が起きたあとにどのように人々が再生したのかを検証できるのではないか」として、映像を通じて震災後、県内沿岸部の郷土芸能が支援などを受けて復活し、伝承する様子を紹介した。

 一方、県内各地で後継者不足などによって活動休止に追い込まれる芸能が増えている現状にも言及。沿岸部の今後について「地域の復興に対し、単に心の支えだけではそろそろもたないのではないか。地域に戻れるという状況を早くつくっていかないと、民俗芸能そのものもしぼんでしまう危機感を感じる。この勢いを継続していけるかは、これからの取り組みにかかっている」と語った。

 続いて、パネルディスカッション「震災から5年〜被災地芸能の現状と展望」を実施。古水力氏(大船渡市・浦浜民俗芸能伝承館長)、久保田裕道氏(東京文化財研究所無形民俗文化財研究室長)、茂木栄氏(國學院大学教授)が発議者、小島美子氏(国立歴史民俗博物館名誉教授)が司会を務め、それぞれの立場から民俗芸能の復興について考えを発表し、意見を交換した。

 学会は最終日の1日、同館で開かれる「すみた芸能まつり」を見学し、町内の郷土芸能に触れる計画。世田米地内の散策なども予定している。