利用促進へ理解深める、三つの講義展開/住田町で地域材活用セミナー

▲ 関係者らが三つの講義を通じて地域材の活用策を探ったセミナー=住田町役場

 大槌・気仙川流域森林・林業活性化センターと気仙地方林業振興協議会が主催する「地域材活用セミナー」は4日、住田町役場で開かれた。地域材の活用や今後の可能性を探る三つの講義が行われ、参加者らは地域材の利用促進に向け、技術や活用方法への理解を深めた。

 セミナーは、公共建築物などへの地域材の積極的な活用を促進するため、木材や木造技術にかかる理解を深めてもらおうと企画。県沿岸広域振興局が後援した。

 この日は、気仙内外の建築設計事務所や工務店、林業・木材産業、行政機関などから約50人が出席。同センター会長の中村勝義大船渡農林振興センター所長は「木造建築物は法令や強度、技術者、材料の確保などさまざまな面で分かりにくい、使いにくいと聞かれる。セミナーを通じてこの疑問をいくらかでも解消、理解し、一般住宅へも地域材の利用を進めていくよう期待したい」とあいさつした。

 続いて、TOC一級建築士事務所の高山久氏が「地域材を活用した木造公共建築物等の課題と展望」、県県土整備部建築住宅課主査の小堀啓氏が「建築基準法の性能規定と木造建築の可能性」、県産材認証推進協議会事務局の平野潤氏が「岩手県産材の証明制度の概要」と題して講義を展開。それぞれ地域材活用の事例や現状、今後の動きなどを紹介した。

 このうち、高山氏は木造公共建築物の設計、監理に携わっており、昨年落成した町役場庁舎、紫波町の官民複合施設・オガールプラザを手掛けた。講義ではこれら施設の建設事業での経験を踏まえて地域材を活用した木造公共建築物の現状や課題、今後の展望を述べた。

 この中では、公共建築物の木造や木質化に当たって地域材を活用する上では、技術者の不足、難解な法規制、困難な木材調達と建設・維持管理コストの調整が課題になっていると指摘。その上で、今後は関係者である地域、発注者、設計者、施工者、木材供給者の5者が円陣を組み、木材情報の共有や連携を図るとともに、協働による技術者の育成が必要であるとした。

 また、難解な法規制は「ただし書き」と「緩和措置」の活用で解くことができると説明。町役場庁舎の防耐火に当たっては、自主的に準耐火構造にしたり、スプリンクラーを設置するなどの対応を取ったとした。さらに、木材調達の情報収集や地域と協働した持続的な維持管理などの重要性も示した。

 まとめでは、「木材の地域循環型生産システムを構築していこう。これができるかどうかが木造の良し悪しに響く」と言及。「住田町においては発注者、木材供給者、設計者、施工者、地域でものを一緒に造ってきた経緯がある。各段階で情報を収集し、問題ができれば解決してきた。さらに、中断面集成材を使うことで地元の木材供給会社を活用し、地域と協働して持続的な維持管理体制を整えてきた流れがある」と語り、地域材を活用した林産業の継続や地域活性化につながるよう期待を込めた。

 参加者らは時折メモを取るなどしながら、熱心に聴講。講師陣に質問も行い、地域材をより活用していくための参考としていた。