3年の完成遅れも、県が復興ロードマップ更新

▲ 堤防のかさ上げとそれに伴う新たな橋の架け替えを行っている盛川の災害復旧工事=大船渡市

用地取得長期化など要因に

 

 県は、東日本大震災からの復興事業工程を被災12市町村ごとにまとめた「社会資本の復旧・復興ロードマップ」の最新版を発表した。大船渡市で整備が進められている海岸保全施設19カ所、漁港8カ所で同マップ前回公表時より完成時期がずれ込み、うち盛川の堤防かさ上げ工事と須崎川の水門工事は県内最長となる3年の遅れが生じることが分かった。地元住民との整備計画調整や用地取得の長期化などによるもの。震災発生から4年8カ月を迎えようとする中、漁業者のなりわいの拠点の再生や安全安心の確保へ一日も早い完成が待たれる。

 

151108-1面・復興ロードマップ

 

 

 ロードマップは被災者の今後の生活設計・再建などに資するよう▽海岸保全施設▽復興まちづくり▽復興道路▽災害公営住宅▽漁港▽港湾▽医療▽教育──の社会資本の主要8分野について平成24年7月に策定。住民の合意形成や用地取得などの要因により工程の変更があり得るため、定期的(年4回程度)に情報を更新しており、5日に9月末を基準日とした最新版が公表された。

 それによると、防潮堤や水門といった海岸保全施設は、大船渡市内に23カ所、陸前高田市内に19カ所整備される計画。

 このうち大船渡市では、ともに工期を本年度末までと見込んでいた盛川の堤防かさ上げ工事と須崎川の水門工事が30年度末までにずれ込む。

 護岸崩壊や破堤などした盛川の復旧工事は24年度中に着工。県大船渡土木センターによると、遅れの原因は支障物件の移設と後背地の用地取得に時間を要しているためという。

 25年度から工事が進められている須崎川は、河口部付近の水中に震災で流されたとみられるがれきなど構造物が確認され、当初の想定と異なる地盤状況が判明したため、採用していた工法を見直したという。

 ほか市内の海岸保全施設では完成が2年遅れるのが4カ所、1年遅れが6カ所、1年以内の遅れが7カ所に上った。県大船渡水産振興センターなどによると、主に地元との整備計画調整により完成がずれ込んだという。

 陸前高田市内の同保全施設で新たに工事完成の遅れる個所はなかった。

 防波堤や岸壁の復旧といった「漁港」分野では、大船渡市内の8カ所で3カ月~1年、完成が延びる。同センターでは遅延の主な理由について「漁業者の仕事に影響を与えないため、どうしても工事の空白期間ができる」などとしている。

 一方、自治体が被災者の住宅再建策の柱としている防災集団移転促進事業(防集)の造成工事や災害公営住宅の整備事業は着実に進ちょくしている。

 防集は大船渡市で全23地区のうち20地区で、陸前高田市で26地区中23地区で完成。両市で新たに完成が遅れる個所はなかった。

 災害公営住宅については陸前高田市の脇ノ沢(60戸)で28年度第3四半期から同年度末に完成が延びたが、1年以上のずれは見られなかった。28年度末までに計画する大船渡市の27カ所801戸、陸前高田市の11カ所895戸が出来上がる予定となっている。

 気仙における1年以上の完成遅れ個所は別表の通り。