放置自転車で復興に一役、松戸市が大船渡市へ届ける(別写真、動画あり)

▲ 「復興の一助に」と松戸市から贈られた自転車。乗り心地を確かめる戸田市長㊧=大船渡市役所

 大船渡市に7日、千葉県松戸市から自転車100台が贈られた。松戸市が駅前などから撤去した放置自転車を新品同様に整備して無償提供したもの。今後、駅や宿泊施設に置かれ、観光客らの無料レンタサイクルとして使われる。

 松戸市では年間1万台ほどの放置自転車が撤去されているといい、撤去の公示から6カ月後に市の所有物になり、その後は原則、外国での使用を条件に業者に売却しているという。震災があった23年の6、7月にかけて、住民移動用として大槌、山田両町と気仙沼市に合わせて205台を贈った経緯もある。

 大船渡市は昨年、復興の柱の一つとして32年度までの観光ビジョンを策定。この中では、駅やホテルなどでレンタサイクルを導入し、各地域の観光資源をめぐる「小さな旅」の取り組み展開を掲げている。

 市民同士の交流をもとに、放置自転車をいかした被災地支援の実績がある松戸市への譲渡を依頼する案が上がり、今年8月、申し入れに至った。

 松戸市ではこれを快諾。状態のよい100台を選び、さび落としやチェーン交換などの再整備をほどこしたうえ、両市の友好を願う握手をイメージしたシールをはり、6日午後に4台のトラックに乗せて大船渡へ送り出した。

 トラックは7日午前9時ごろ、市役所に到着。譲渡式では戸田公明市長が松戸市の青柳洋一街づくり部長に引受書を手渡し、「駅などから先の交通は利便性を欠いてもおり、『小さな旅』の手法を考えている中、寄贈はたいへんありがたい」と感謝。「観光振興に役立てていただくことで復興の一助になれば」とする本郷谷健次松戸市長のメッセージも披露された。

 大船渡市では全台の防犯登録を行ったうえ、▽県旅館ホテル生活衛生同業組合大船渡支部▽三陸鉄道▽五葉温泉▽魚市場──に無償貸与することとしており、準備が整えば今月下旬にもレンタサイクルとして活用が始まる見通し。

 譲渡式に立ち会った三鉄南リアス線運行部の吉田哲部長は、「すでにレンタサイクルを置いている盛、越喜来両駅の増台と、新たに吉浜駅への配置を考えている。地域の魅力発見に役立てていきたい」と話していた。