森林資源の有効活用へ、木質バイオマスフォーラムinけせん/陸前高田

▲ 木質バイオマス発電について講演した沢辺氏㊥=陸前高田

 木質バイオマスエネルギーフォーラムinけせんは11日、陸前高田市米崎町の市総合営農指導センターで開かれた。参加者は地元材を使った地域熱供給やボイラーの活用、木質バイオマス発電の課題など、幅広い観点からエネルギー利用の可能性を研修。気仙の総土地面積は84%を森林で占める中、有効活用に向けて意識を高めた。

 大槌・気仙川流域森林・林業活性化センター(会長・中村勝義県大船渡農林振興センター所長)と気仙地方林業振興協議会(同・戸田公明大船渡市長)、県林業振興課が主催。木質バイオマスエネルギーの利活用や課題などについて理解を深めようと企画した。

 気仙の行政、林業関係者ら約60人が出席。冒頭、中村会長は「今後建設される公共施設での推進など、木質バイオマス導入を進めていきたい。展望や課題について、この機会を生かして理解を深めてもらえれば」と述べた。

 講師を務めたのは、紫波グリーンエネルギー㈱の中尾敏夫氏と、矢巾町に本社を構えるオヤマダエンジニアリング㈱の岩井光信氏、岩手大学農学部名誉教授の沢辺攻氏。中尾氏は紫波町内で展開する熱供給事業、岩井氏はチップボイラー、沢辺氏は木質バイオマス発電を中心に、実情や今後の課題を語った。

 中尾氏は「オガールエリア」と呼ばれる紫波中央駅前のエネルギーステーションで暖房、冷房、給湯を生み出し、紫波町新庁舎やオガールベース、住宅に供給する取り組みを説明。オガールベースはバレーボール専用体育館が併設されたホテルで、ビジネス者向けの宿泊や合宿などで利用が進む。

 町内で生産された木質チップを主燃料とし、木質バイオマスを使った循環型の地域熱供給を展開。スイス製で総延長3・5㌔の配管を敷設し、50年程度の耐用年数を見込む。住宅や宿泊施設で用いる一般的なボイラーと大差がない使用料としている現状や、稼働停止時は予備のガスボイラーに自動で切り替わるリスク低減策も明かした。

 岩井氏は、オガールエリアや特別養護老人ホームすみた荘など、10年間で32台のチップボイラーを導入した実績をもとに解説。今後の展開として▽パッケージ型ボイラー(建設コストを抑え、移設可能)の開発▽冷温水発生装置との組み合わせ(冷房利用)▽施設の実施利用状況と負荷計測による提案──などを掲げた。

 県任命の木質バイオマスコーディネーターも務める沢辺氏は、東日本大震災以降に木質バイオマス発電に対する期待・設備投資が広がり、未利用材の活用につながっている現状に言及。発電コストの約7割が燃料費で占めている実態にもふれた。

 燃料費は原料搬出や運搬、チップ加工などからなり、沢辺氏はいずれも高額を要すると指摘。「コストを収縮させるような技術集積ができておらず、過渡期にある」と語った上で、効率化が必要との認識を示した。

 出席者は各講師に質問を寄せながら、熱心な表情で聴講。気仙が誇る豊かな森林資源の有効活用を見据え、知識を深めていた。