地域社会のあり方探る、県主催のふるさと振興シンポジウム/住田(別写真あり)
平成27年11月12日付 1面
県沿岸広域振興局大船渡地域振興センター(伊勢貴所長)主催の「ふるさと振興をみんなで考えるシンポジウムin気仙」は11日、住田町役場町民ホールで開かれた。人口減少社会が進む中において、地方創生の取り組みや地域社会が持続していくために何をすべきかなどを学び、考える基調講演とパネルディスカッションを展開。参加者らは他地域の事例などにも理解を深め、参考としながら、今後における地域社会のあり方を探る機会とした。
人口減少社会 何をすべきか
このシンポジウムは、人口減少時代における小規模市町村や持続可能な地域社会のあり方について考えを深め、新たな行動を起こす契機の一つにしようと企画。住田町が共催した。
この日は、県や気仙各自治体の職員、地域住民ら約60人が出席。伊勢所長、多田欣一町長のあいさつに続き、2部構成によるシンポジウムを行った。
第1部は、首都大学東京大学院教授であり、住田町の総合計画・人口ビジョン・総合戦略推進委員会で委員長を務める大杉覚氏が基調講演を展開。「地域社会の持続可能性を高めるために我々がなすべきこと」をテーマに、なぜ地方創生なのか、地方創生を地域づくりのチャンスにするためにすべきことは何かなどについて解説した。
大杉氏は、「名称はその時々によって違うが、地方創生はずっと言われてきた。だが、これまでと少し変わってきたのは人口減少へ本格的に日本全体が突入して、その中での地方を考えなければならなくなったこと」と言及。人口減少社会に向き合うためには、▽現実の直視(人口減少をチャンスととらえる逆転の発想)▽攻めの経営(地域の「強み」を積極的にPR)▽基盤づくり(住民力・地域力・連携力の底上げ)──が必要であるとした。
地方創生を地域づくりのチャンスにするため、何を考えていくかという話題では、①地域の実像・将来像を「見える化」する②「見える化」された将来像から逆算する③人口減少を踏まえた行政サービスの提供戦略の練り直し④「強み」探しを起点に「地域創発(プラスアルファの付加価値)」を住民参加・協働で取り組む⑤情報共有を大胆に進める──のポイントを紹介。行政のみならず、地域コミュニティー、民間事業者、住民らが協働で取り組んでいく必要性を示した。
最後に、実りある地域づくりに向けてとして、「計画づくり、戦略づくりはあくまでも手段。地域自らが将来ビジョンを描き、何が課題かを共有し、具体的な解決策を徹底して探ることをしっかりやっていこう」などとアドバイス。「地域社会の持続可能性を深めるという上で、地方創生をうまく活用して、大都市とは違う地域の良さを自らつくり、こうした地域にしていきたいという思いをぶつけてほしい」と呼びかけた。
休憩を挟み、第2部はパネルディスカッション「人口減少社会に立ち向かう」を展開。北海道下川町環境未来都市推進課長の長岡哲郎氏と和歌山県那智勝浦町色川地域振興推進委員会長の原和男氏がパネリストを、大杉氏がコーディネーターを務めた。
この中では、長岡氏が「環境未来都市下川町の取り組み~森林を造り、未来を創る~」と題して、原氏が「移住者受け入れ40年の歴史からみえるもの」として、それぞれが取り組んでいる地域づくりの事例から、課題や成果などを紹介。その上で、今後の地域社会のあり方について意見を交換し合った。
出席者らは講師たちに質問も交えながら、熱心に聴講。地方創生の取り組みや地域社会の持続に向け、すべきことは何かなどを改めて考えていた。